そろそろレジェンドレアのお酒を頂いてみよう。
レジェンド=伝説級のお酒とは如何なるものか。ハードルが高まり切った状態でいただく、夏の酒ガチャ2021の初のレジェンドレア。
今までのSSR*1でも充分おいしかったし、SR*2でもおいしかった。NR*3は入ってなかったけど、まぁこの感じならハズレ感は無いだろう。
となると、逆にじゃあ「LRはどれだけ突き抜けておいしいのか」という期待が高まる。
「FRESH VINTAGE 2018 和歌山山田錦」について
FRESH VINTAGE――FRESHは新鮮、新しく瑞々しい状態を示す言葉。VINTAGEは型式を指し、特に年代物に対して使う言葉である。
この相対する2つの言葉。これらを共存させた日本酒、という事らしい。
つまり、フレッシュでありヴィンテージ感も楽しめる日本酒。はて、まだ味のイメージは付かない。
日本酒の"フレッシュ"
日本酒のフレッシュといえば、キリっとした辛口な感じだろうか。
若く落ち着きが無いような、ちょっと粗くて味わいも淡麗で。
リクルートスーツとか着て革靴ピカピカな感じの新社会人、みたいなイメージだ。
日本酒の"ヴィンテージ"
円熟した日本酒は色、味、香りの個性が増す。
自分の居場所はだいたいこの辺だな、という事を悟った年代のような落ち着きを醸している。
"古酒"と呼ばれるまでになった日本酒は熟した果実のような香りが感じられる。フレッシュな日本酒はメロンやリンゴのような香りがするが、マンゴーみたいな豊満な香りへと変わる。
フレッシュ×ヴィンテージ
これらの要素はおおよそ正反対の要素である。
果たして両方を兼ね備えている味とは――?
早速飲んでみたいところだが、もう少し深堀りしていく。
中野BC株式会社
このお酒を造るのは和歌山県にある「中野BC株式会社」。
BCはBiochemical Creation(生化学的な創造)を意味しているらしい。あれ…酒造メーカーっぽくない名前…。
歩み
元々は醤油醸造→酒造業としてスタートした中野BC株式会社。
戦後に出した焼酎「富士白」は、その高い品質で当時から根強い支持を増やしていった。
1958年には同社初の清酒、つまり日本酒を出した。
1979年には和歌山県という立地を活かして梅酒の製造にも参入。
月日は流れ、1998年には健康食品や化粧品分野にも進出。こうして現在の中野BC株式会社となる。
メインは酒造業でありつつも、ヘルスケアや研究・開発、そして観光部門などもあり、様々な事業を展開している。
山田錦について
山田錦といえば日本酒。日本酒と言えば山田錦。と言っても過言ではないかもしれない。
日本酒醸造で用いられる米の品種――いわゆる酒米であり、日本で使用される酒米としては最大の生産量を誇る品種である。
酒米だが、実は食用も可能である。
山田錦は全国様々な地域で作られている。同じ山田錦でも土地によって気候や環境差がある以上、味わいも異なる。
「FRESH VINTAGE 2018 和歌山山田錦」では和歌山県産の山田錦を100%使用している。
スペック
「FRESH VINTAGE 2018 和歌山山田錦」は日本酒。
度数は16%と、標準よりもやや高い。
原料米は前述の通り、和歌山県産の山田錦100%。
磨きは55%。いわゆる純米吟醸酒に分類される。
日本酒度は+4.5。あいねよりも辛口、という事になる。
酸度は1.7%。平均的だ。
アミノ酸度は1.1%。こちらも特に飛び抜けていない。
飲んでみる
お待たせ。レジェンドレアとの謁見としよう。
ラベルもどことなく重厚に感じる。
注いでみる。わずかに有色。純米吟醸らしい色合い、とも言える。
香りから既に複雑。キリっとしたフレッシュな香りがするが、その奥に何か居る。バナナのような香りが先に来て、その後はナッツのような香りがする。
日本酒にスモーキーという表現は似つかわしくないが、不思議な香りがした。
飲んでみると、キリっとした切れの良いフレッシュ感が気持ち良い。
久保田の千寿あたりのような感じだろうか。淡麗で飲みやすく、料理とも合わせやすそうだ。
しかし、後味に驚く事になる。
徐々にフレッシュさの中にまろやかさが侵入してくるのだ。
最終的に後味は円熟味のあるリッチな味わいに。どことなく"とろみ"すら感じる。
そして余韻はナッツと洋ナシを合わせたような印象へ変化する。
この不思議な感覚は、初めての体験だ。
両者は混じり合わない。二口目でも最初のキレは健在。しかし、口に含んでいるとどんどん丸みを帯びる。
とても不思議な日本酒だ。
フードペアリングは、この個性的な味わいに負けないくらいの個性が欲しい。
それか食材をシンプルにしてお酒をメインにしてしまうか。そうなってくると、肴はもう漬物とかで良い気がする。
まるで転生した子供と対話するかのようなお酒だ。
子供のくせに妙に達観した喋り方をする。内面を知れば知るほど、年齢に似付かわしくない事に気付く。
もしや…?と内面を探れば、その先は…まだまだ未知の世界はたくさんある。