名前、色からしておいしい。間違いなくおいしい事は確定した。
しかし、レモンはお酒としてはあまりに身近だ。ビール、ハイボールに次いでレモンサワーは大人気である。
レモンとお酒
そもそもはサワー(酎ハイ)のいちカテゴリーの過ぎなかったレモン。
しかし、レモンサワーは一番作りやすいフレーバーだと思う。酸味料(クエン酸)を用いる事で容易に表現が出来た事も理由のひとつだと思っている。
また、レモンそのものが容易に調達可能な果実であり、身近で馴染みがあり、料理とも合わせやすい。これらの理由より、レモンサワーがサワーの中での代表格となったと考えられる。
海外でのレモンサワー
海外には日本のようなレモンサワーは無い。
ああいったドリンク市場として専門用語ではRTD(Ready To Drink=すぐに飲める酒)と言うのだが、海外ではスミノフやZIMAのようなフレーバーのものが一般的である。
例えばヨーロッパにはワインがあるしアメリカはビール大国、そして海外ではウイスキーもメジャーなので、サワー文化はそこまで発展していない。
むしろクラブ等のシーンで、既に調合済みのカクテルのような立ち位置でRTDが好まれ、買ってすぐにおいしいフレーバーを楽しめる手軽なお酒として親しまれている。
なので、日本ほどサワーを飲む風習は無いし、ましてやレモンにフィーチャーされる事も無い。
――というのが、時代背景である。
最近では「日本のサワーがおいしい」と買いまくっているマニアもいるとか。
ちょうどこっちで言うところの「海外のエナジードリンクがすごい」と買いまくる層と似ているのかもしれない。
歴史
日本に限らないが、お酒の興隆には"その土地の名産の穀物"、"酒税法の仕組み"、"禁酒の歴史"、"外国とのやりとり"等の要素が絡み合う事により、お酒の好まれ方や流通する種類は異なる。
日本では1980年代にハイボールの代替品――つまり廉価版としてチューハイが誕生した。ウイスキーは酒税が高かった、という背景がある。
酎ハイは「焼酎をハイボールにしたもの=焼酎のソーダ割り」が語源である。
その後、居酒屋等で酎ハイがプッシュされた事もあり、全国に定着。
その後サワーという呼び名も生まれた。サワー(sour=酸っぱい)の語源通り、レモンフレーバーで酸味のあるサワーが誕生。当時は焼酎とレモンの組み合わせは驚かれたが、定着した。
今ではどんな居酒屋でも酎ハイ・サワーが飲める。
また、バリエーションも豊富で、まず果物ならば何でもサワーとしてフレーバーに出来る。コーラサワー(≒コーラハイボール)、カルピスサワー等もあり、その種類は多岐に渡る。
2010年頃にはストロング系チューハイがブームとなった。
10%未満ならば酒税が安い事を利用し、ギリギリの9%のチューハイが多く出た。
これは主に健康面で賛否両論。個人的にもあまり良質のアルコールと言えない味わいの物が多いと感じていて、あまり常飲しない方が良いと考えている。
ただ、「アルコールを体内に取り入れる」という費用対効果に於いてはコストパフォーマンスが高いと言える。
2017年頃からは各メーカーがリアル系レモンサワーに着手。
レモンの果肉を配合、レモンオイルを使用、皮の苦みを活用…などなど、各メーカーがよりリアルな味わいのレモンサワーの開発を進めた。
自宅でもレモンサワーが造れる「サントリー レモンサワーの素」が発売したり、コカ・コーラ社の大ヒット作「檸檬堂」も記憶に新しい。
この辺から、レモンのフレーバーは他のサワーの味たちよりもワンランク先へと進んだ。
レモンの将来
これだけ国内で人気なレモンだが、そのほとんどが輸入物。
国内自給率は10%を切り、一説によると4%程度だとか。
これは輸入自由化による影響で、国内産レモンは外国産レモンに比較して恐ろしく高い。
国内産レモンはたまにスーパーでチラッと見掛ける程度しかなく、あとは生産地での消費が主。
レモンサワーを作る大手メーカー等はまとまった量の安定して安い原材料が必要になるため、もちろんほとんどが外国産だ。
個人的な展望としては、これだけレモンが望まれているのだからもっと国内生産が盛んになれば良いと思っている。もちろん、国も補助を出して。
瀬戸内レモンが出てきた時にはその突破口となりそうだと期待した。ここからどんどん様々なレモンのブランドが立ち上がれば全体的に活気づくかもしれない。
何もしない立場ながら、勝手に今後のレモン業界に期待している。
「まぁるいれもんのお酒」について
そんなレモンとお酒の切っても切れない関係性。
レモンはお酒を呼び、お酒はレモンを呼ぶ。
「まぁるいれもんのお酒」はレモンサワーでもレモンサワーの素でもなく、分類上はリキュールとなる。
つまりこのままロックやストレートで味わうものだ。もちろん水割りやソーダ割にしても良いけども。
使用するレモンはなんと国産。
レモンの産地までは分からなかったが、貴重で安全なレモンだ。
海外のレモンは輸送の関係上、どうしても農薬等を多く使用する。長い輸送にも耐えなければならないしね。そういった面で、国内のレモンは安心できる。
この国産レモンを日本酒と合わせているのが「まぁるいれもんのお酒」。
日本酒とレモンの組み合わせがどうなるのか…飲んでみないと分からないが、個人的には意外性を感じる。
普通は蒸留酒と合わせた方が相性が良いはず。敢えて日本酒と合わせたお酒、果たしてどう出るのか…。
造り手、福井弥平商店
滋賀県で200年以上も酒造りを行っている酒蔵、福井弥平商店。
200年前って普通に江戸時代だからな、びっくり。
地元にて日本酒の原料米も栽培しており、日本酒造りを主とする。
更に、その自慢の日本酒にみかん、ゆず等の各種フルーツを漬け込んだお酒も取り扱う。この中のひとつにレモンを漬け込んだお酒がある。
これがKURANDより出ている「まぁるいれもんのお酒」の原型となる。
スペック
まぁるいれもんのお酒は分類上レモンリキュール。
度数は7%。ベースは日本酒。
レモンは国産の完熟レモンを使用。添加物として糖類を使用している。
飲んでみる
グラスに注ぐ前に、瓶をゆっくりと逆さまにし、沈殿物を馴染ませる。沈殿物はレモン由来だろうか。
グラスに注ぐと綺麗なカナリアイエロー。着色料を使わずにこの色ならば、かなりの量のレモンを使っているだろう。
グラスから漂う香りはしっかりとレモン。
しかしレモン香にカドが無い。流石国産レモン。
国内産レモンは輸入レモンと比較するとピーキーな酸味が無く、味にはやや丸みがある。軟水だからだろうか。
酸味が尖っていない分、レモンの中に潜む甘味も感じやすい傾向にある。
レモンの香りの奥から、日本酒の香りも感じられる。米の香り。
レモンの香りと日本酒の香りが合わさり、より甘味があるように感じられる。
実際に飲んでみると、しっかりと酸っぱいレモンの味がインパクト。
かなり酸味があり、レモン系飲料の酸味が苦手な人にはオススメ出来ない。が、そういった酸味が好きな方ならば楽しめること請け合いである。
レモンの風味も非常にリアル。漬け込まれたレモンがそこに見えるかのようなリアリティで、果汁感たっぷり。果皮由来であろう苦みも感じられる。
後味はスーッとした感覚で、日本酒らしいもの。
レモンの爽やかさと日本酒のキリっとした風味が親和性が良い。
日本のお酒には日本の食材が合う。
ワインにはイタリアンやフレンチが合う。その土地のお酒はその土地の料理に合うように出来ている。
この「まぁるいれもんのお酒」は日本酒がベースだが、国産のレモンにマッチしていた。
その土地の酒にはその土地の素材――これはハズす事が無い原則である。