梅酒のスパークリング。
最高じゃないですか、わざわざソーダ割りにする必要が無いなんて。
"梅酒"とは何なのか
そういえば、梅酒ってなんだろう。身近なのに全然知らない。
例えるならば、「電気が発電所からどういう道を経て自宅に届いているのかを理解していない」という感じに近い。
「梅酒が梅から作られる事は知ってるよ」というのも、「電気が何となく電線を通って家まで来てる事は分かるよ」みたいな感覚か。
梅酒の歴史
梅酒は江戸時代には飲まれていたらしい。
江戸時代というと昔に感じるが、お酒の中では比較的新参者だ。日本酒なんかはあの日本書紀にも記述があるとの説も。
江戸時代に飲まれていた"らしい"、というのは江戸時代の食物大全のような書物「本朝食鑑」に記載があったから。
この「本朝食鑑」は、どの食物が安全か、とか効果・効能とか栽培方法・調理方法等、かなり詳しい記述があったようだ。
しかしこの書物は庶民には読みづらい学術的な文調だったため、おそらく世間的に梅酒を飲む事が浸透しているわけではなさそうだ。
時は流れ、1912年。大正時代に広島の米原氏により作られたのが始まりとされる。
こちらが一般的に「日本で梅酒が飲まれだした時期」として取り扱われる。
梅酒≠果実酒
「果実酒とは?」という話については、以前他の果実酒を飲んだ時に触れた。
果実を発酵させてお酒にしたら果実酒、既にお酒として存在するものに果実を入れたらリキュールとなる。
つまり果実(+麹)によってアルコール度数が一度でも高くなれば果実酒である。
梅酒に関しては、家で作ったことがある人ならばわかると思うけども、既にお酒として存在するものに果実を入れて作成する。つまり分類上は梅酒=リキュールなのだ。
梅とともに麹等を入れたら果実酒になるかもしれない。ワインの梅バージョンみたいな。けど、どこもやっていないっぽいのできっとおいしくないか非常に手間が掛かるのだろう。
なお、このブログでの果実酒・リキュールの呼び分けは酒税法上の分類に基づく。
リキュールなのに勝手に果実酒と名乗っている場合もある。この辺は非常にやんわりしているし、敢えて突こうとも思っていない。
梅を何に漬ける?
梅酒は梅を直接お酒に加工しているわけではない。既に完成してるお酒に梅を漬け込み、梅のエキスを浸透させることで梅酒となる。
つまり、このベースとなるお酒も重要である。
梅酒の定義としては、ベースとなるお酒の種類は不問である。焼酎に漬けようがブランデーに漬けようが自由なのだ。
ただし当然ながら、お酒にクセがあれば完成形もその個性は引き継がれる。
よって、基本的に無味無臭であるホワイトリカー*1を使う事が多い。
「&AKA Sparkling」について
まず気になるのはそのネーミング。
&が付いているから、多分見えない何かがAKAの前にあるはず。
"何か"&"AKA"なのだ。その何かは何なのか。AKAとは何なのか。
それらを紐解く前に、まずはこのお酒はただの梅酒ではないという点に触れる。
「& AKA」と「& AKA Sparkling」
実はこの「& AKA Sparkling」は、いわば二号機にあたる。「& AKA」という先輩がいるのだ。
製造元は同じで和歌山県にある湯浅ワイナリー。
ワイナリーの名の通り、ワイン醸造をメインとしている会社だ。
ゆえに「&AKA」は赤ワインをベースとした梅酒である。そして「& AKA Sparkling」でも赤ワインをベースとしつつも炭酸ガスを入れてスパークリングにしている。
ははぁ、そしたらAKAは赤ワインの"赤"かもしれない。
そう考えると、確かにラベルデザインとも合致する。&の近くには梅の実のようなイラストがあり、「梅 & AKA」と読む事も出来る。
つまり&の前には梅が入るのかもしれない。これらについては想像の域を出ないけども、そういうネーミングひとつ取っても色々と考えられる余地が残してあるのは面白い。
湯浅ワイナリー
製造元にも触れておく。
和歌山県にある湯浅町という地域は古くより醤油醸造が行われている。"醤油発祥の地"とも言われており、今でも有名。
海沿いに面しているが深く入り江となっている地域で、漁業も盛ん。柑橘類の栽培も多く行われている。
そんな湯浅町に構える湯浅ワイナリー。2019年に設立されたばかりの酒蔵だ。
真新しい工場は様々な機械が並び、いわゆる樽が並んでいる薄暗い倉庫を想像していると面食らう。
スペック
「& AKA Sparkling」は梅酒。
アルコール度数11%。ワインとブランデーをベースとした梅酒である。
飲んでみる
注いでみると、見事なワインレッド。
そして思ったよりも炭酸が強く、泡が多く出る。ゆっくり注がないと溢れてしまいそうになるレベル。
香りは、梅ジュースのよう。梅酒のこってりまろやかとした感じではなく、少し酸っぱさを感じるような梅感。ワインらしいアルコール香もしっかりと感じられる。
飲んでみると、梅のかぐわしい香りがしっかりと。単なる梅酒とは毛色が違う。
ゴクッと飲み込む前にはワインのボディも感じられ、飲みごたえもある。かといって重厚ではなく飲みやすい。
スパークリングになっている事で、カジュアルに飲む事が出来る。
後味にブランデーがさりげなく顔を出す。ワインも梅もブランデーもバランスが良い。
梅酒という枠ながらも、新感覚のお酒として楽しめた。
「梅の香る赤ワイン」というようなポジションで料理と合わせるとマッチしそう。やはり牛肉がベストかな。
*1:和製英語。製糖時の副産物を発酵させたもので、無色透明。分類上は焼酎となる。