ねこらぼ( 'ω')

名古屋でこそこそと活動っぽいことをしている橋本ねこのブログ( 'ω')

【LR】日本酒「2011141719」をいただく

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あからさまに格式高いルックス。

一目でタダ物じゃない事が分かる。

これがレジェンドレアの風格。

 

色からしてブランデーとかそういう類いかと思いきや、なんとカテゴリーは日本酒。

ふむ、貴醸酒というらしい。

 

貴醸酒

琥珀色のお酒は、まるで古酒のよう。日本酒にも古酒の概念はあるが、この貴醸酒は古酒とはまた少し毛色が違う。

水の代わりに"酒"を使う

最も特徴的な点として、仕込み水の代わりに酒を使う点にある。

"三段仕込み"という三段階の醪(もろみ)造りの工程の中の最後の工程である"留添え"にて、水の代わりに酒を使って醸す。

 

日本酒造りに於いて水は米と同じくらい重要である。それぞれの蔵元が水道水ではなく、専用の水質の良い水――いわゆる"仕込み水"というものを用いる。

貴醸酒では酒を使って仕込みを行う。水で酒を醸していくのではなく、酒で酒を醸していくのである。

もちろん仕込みに使う酒も安酒ではない。とても贅沢な製法である。

呼び名

貴醸酒という名称は、貴醸酒協会に加盟していないと使用できない。

非加盟の酒蔵では「三累醸酒」「再醸仕込み」等と呼ばれているらしい。

日本独自の高級酒を目指して

貴醸酒って貴腐ワインみたいだな、と思っていたら本当にそこから由来しているらしい。

「日本でも日本独自の高級酒を」ということで開発されたのが1973年のこと。

現在では、迎賓館や海外からVIPを招いた際にこの貴醸酒が振る舞われたりするらしい。確かにそれはレジェンドレアだ。

 

「2011141719」について

数字の秘密

意味深な数字の並ぶラベル。

2011141719…2011は年っぽさがあるので、そのまま日付説が浮かぶ。

しかし次の"14"で引っ掛かる。14月は無い。ので、一桁ずつ月と日として、2011年1月4日か。

ちょうど4ケタ余るので、17時19分として…。

2011年1月4日17時19分と読み解いたが、これが何を意味するのか。この貴醸酒の生まれにしてはピンポイント過ぎる。

 

ネタばらしをすると、2011年、2014年、2017年、2019年と4つの貴醸酒をブレンドしている事に由来するらしい。

なので、2011、14、17、19、となり、2011141719という名前になったとか。

2011といえば10年も前のことである。10年もの歳月を超えた貴醸酒は、もうすっかりヴィンテージと呼んでも良い古酒である。

 

それぞれの特徴的な4種のお酒をブレンド…カッコよく言えばアッサンブラージュ*1したもの。果たしてどんな味がするのか。

そんな貴醸酒を作ったのは榎酒造だ。

榎酒造

先ほど、貴醸酒を名乗れる貴醸酒協会という名前を出した。

ここの中心となっている酒蔵、そして貴醸酒を商標登録した酒蔵こそが、この榎酒造である。

 

広島県、呉市音戸町にて1899年に創業。明治時代だ。

様々な日本酒造りをした倉であり、戦前から品評会で賞を取っていた。

1974年に全国で初めて貴醸酒を醸造。ここから現代まで貴醸酒界を牽引し続けている。

スペック

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「2011141719」は日本酒。

分類としては精米歩合70%の純米酒となる。

そして、白麹を用いたオーク樽貯蔵の貴醸酒である。

アルコール度数は14%。

日本酒度は-50であり、極めて甘口。

酸度は4.0%とやや高め。

 

飲んでみる

貴醸酒は冷やで行くべきか、熱燗か、はたまた常温か――。

「純米酒」のセオリーで行くなら冷やが良いだろう。キリっと冷やして口の中でまろやかさを味わいたい。

悩んだあげく、ひとまず常温で行ってみる事に。微妙なら冷やすなり加熱するなりすれば良い話。

 

グラスに注ぐ前に、ボトルに鼻を近付ける。

この得体の知れないアンバーカラーのお酒。未知のお酒はまずは香りから。

 

――ん?

奈良漬けの匂い…?

 

もう一度嗅ぐ。そして断言する。奈良漬けだ。

奈良漬けの匂いのする液体がおいしいのかどうかのイメージが出来ないが、飲んでみる事にする。

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グラスに注ぐと、綺麗な琥珀色だ。

さて、それでは奈良漬けのような匂い――つまり酒粕の匂いを感じながらいただく事にする。

 

飲んでみると、思いのほかおとなしい味わい。

香りを超えた向こう側は、まろやかで舌触りも良く濃淳で甘くおいしいお酒だ。

日本酒との共通点もあるが、もはや別物である。

 

酒粕の香り、そして飲む直前にはアルコール臭、しかしそれらを超えて飲むと重厚で何とも高級感のある味わい。

徐々にこの酒粕の香りも気持ち良く感じる様になってきてしまう。泥沼へようこそ。

 

甘さ、酸味等が複雑に織りなすハーモニーだが、その余韻はフワッと消えていく。

そう、これだけの要素がありながらもクドくないのだ。

 

 

この粋なお酒を前に肴など不要、ピアノの音があればそれで良い。

 

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*1:仏:Assemblage=混ぜ合わせる、の意。特にワインの原酒をブレンドする事をこう呼ぶ。