ここ数年では国内産ワインも随分と見かけるようになった。
価格も手が届きやすくなってきたと言える。
数年前までは、国内産ワインは価格が高い上にそこまで美味では無かった。
海外のワインの歴史に比べれば、国内ワインはまだまだ浅過ぎた。日本でも生食のぶどうはおいしいが、おいしいぶどうがワインに適しているかというとそういうわけでもない。
これは「巨峰がワイン向きではない」という話で、以前記事にした通り。
フランスのテーブルワインが多く入り、チリワインやオーストラリアワインなんかも安価で出回っている状態で、わざわざ国内ワインを買おうとはしない。更に足場の狭くなる国内ワイン。
そんな国内ワインはブランディングに努め、少しずつ地盤を固めるようにしていった。
2015年、それまでやんわりとしていた「日本ワイン」という呼称の定義が決められた。国産のぶどうを用い、国内で醸造されたワインを日本ワインと呼ぶことに決まった。この定義の施行(完全移行)は2018年だから、結構最近の話だ。
日本のワインは地道にワインを作り続け、2016年には海外のワインコンクールで賞を取ったりもし始める。日本ワインの努力が結実したのだ。
そこにはかつて「水っぽい」「味が物足りない」とこき下ろされていた日本の姿はもう無かった。
甲州ワインなんかはまさにその努力の代表格だと思っている。他にも日本ワインはいくつかあり、今回いただく赤ワインは神戸ワインと呼ばれるもののひとつである。
「神景 赤 2017」について
神戸ワインは神戸ワイナリーで作られるワインを指す。
神戸ワイナリー
1983年に最初のワインを仕込んで以来、神戸市内で収穫されたワイン用ぶどうでワインを作り続けている神戸ワイナリー。
神戸ワイナリーでは5種類のワイン用ブドウを栽培している。この5種類のうち、赤ワインに用いられる品種としてはカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローがある。
カベルネ・ソーヴィニヨン
赤ワインと言えばカベルネ・ソーヴィニヨン、というくらいの代表的品種であり、王道。
カシスのような味わいで、まさに赤ワインらしい味わい。
意外と強いボディを感じるので、初心者には飲みにくいかもしれない。
メルロー
香りがふくよかで、口当たりも柔らかい。世界中で栽培されている。
メルロー100%の赤ワインもあるが、カベルネ・ソーヴィニヨンと混ぜて用いられる事が多い。
ワインの"ヴィンテージ"
ワインにおいてのヴィンテージとは収穫年を指し、ヴィンテージが記載されているとその年に収穫されたぶどうのみで製造されたワインだという事が分かる。
「神景 赤 2017」のヴィンテージは"2017"、つまり2017年に収穫されたぶどうを用いているという事になる。
海外はヴィンテージチャートというものがあり、「〇〇年の〇〇産は良い出来」とかそういう指標がある。
日本では山梨県がヴィンテージチャートを発表しているのを発見した。ただし、地域によって大きく気候が異なる日本では、一つの地域のヴィンテージのみでは判別出来ないため、鵜呑みにし過ぎない方が良い。
情報を多く仕入れる事は、変な先入観を持つ事にもなる。
スペック
「神景 赤 2017」は赤ワイン。日本ワインである。
カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを使用。どちらも神戸産のぶどうだ。
度数は12%。ミディアムボディ。
飲んでみる
グラスに注ぐと、液面は綺麗なルビー色。中心の色は濃い。
飲むと結構タンニンがきつい。粉っぽさを感じるほど。
公式ではミディアムボディだが、フルボディに近いと感じた。
そのままでは香りが閉じっぱなしなので、デキャンタージュを行うか、よくグラスを回して空気を含ませた方が良い。
グラスの中で徐々にほぐれ、少しずつ濃厚なベリーやカシスのような香りが顔を出す。
少しずつ探って打ち解けていかないと、楽しみづらいワインかもしれない。
ちょっと初心者にはオススメ出来ないワインな気がする。ヘタに飲むと赤ワインに苦手意識すら植え付けかねない。
ちょっとだけ室温に馴染ませていくと、後味の中にチョコレートのような香ばしさを見つける。ちょっと黒胡椒のようなスパイシーな一面も。
しかしこれは大人な味だなぁ。
トマトを使った牛肉の煮込み料理なんかとマリアージュさせたい。こってりとした味の肉料理ですら、このワインならばしっかりと受け止めてくれるだろう。
それでも飲みにくければ、ちょっと贅沢かもしれないけどホットワインにすると飲みやすくて良いかもしれない。オレンジとかシナモンを入れて。
一昔前に「薄い」と言われていたあの頃の日本のワインの姿は、もう無い。
海外でもジャパニーズワインとして評価され始めてきている日本ワイン。その将来が、楽しみだ。