梅酒と言えば、日本で古くから飲まれるお酒である。
さながらヨーロッパで言うところのワインみたいなものかもしれない。
とはいえ、ワインほど格式ばったものでも広範なものでもなく、もっと庶民的なもの。
言うなれば各家庭の味噌汁のようなもので、今でも氷砂糖とともに漬け込む家庭もあるだろう。
梅酒として梅を漬け込むときは度数高めの蒸留酒を用いる。詳しい説明は省くが、度数が低かったり醸造酒を用いると密造となる恐れがある。個人で作って飲むだけでも違法になるケースもあるので注意。
うっかりやりやすい事例だと、許可無し手造りサングリアがアウトである。
(酒税法とサングリアの関係は以前にもちょっと触れたことがあるので、こちらを。)
「日田大山」について
梅と言えば和歌山、紀州の南高梅が良く知られる。梅酒としても南高梅を使っているものが多い。知名度も高く、梅の品種の中でも最高級とされている。
しかし、実は大分県にも梅の栽培が盛んな地域がある。
それは、大分県日田市大山町。こちらも梅が特産品で、梅酒、梅干し、梅ジャム等が生産されている。
そんな日田市大山町で生まれた日田大山。
手掛けるのはもちろん日田市大山町にある酒蔵。「梅酒造おおやま」だ。
梅酒造おおやま
日田という土地は酒造りが盛んだ。かつてはサントリーのウイスキー工場もあり(現在は博物館となっている)、水が清らかな地域は酒造りに適している。
酒はどうしても原料となる穀物や果実に目が行きがちだが、水は切っても切れない深い関係である。酒も液体、水分だからね。水の質はとても重要だ。
そんな日田に構える「梅酒造おおやま」。梅酒を専門とし、また梅酒を土台としたリキュールも手掛ける。
工場見学、試飲、梅酒作り体験も出来るらしい。行きたい。
梅は主に大分県大山産の鶯宿梅を用いる。
同社のフラッグシップの梅酒はウイスキー造りに使用したオーク樽を使って仕込んだりもしている。
スペック
「日田大山」は大山産の梅を100%使用した梅酒。
度数は20%。梅酒としてはちょっと高めだ。
ベースはホワイトリカーを使っている。見た目からしてブランデー等に漬け込んでいそうな色だが、これは熟成によるものらしい。
飲んでみる
開栓。鼻を近づけると、濃厚で芳しい香り。これが本当にホワイトリカーなのか。ラム酒みたいな複雑な匂いもする。
香りからして安酒なんかでは無い事が伺い知れる。さすがスペシャルスーパーレア様。
飲んでみると、こっくりとした甘さ。梅の華やかさは言うまでも無し。
どことなくスモーキー。これは熟成香であろうか。
日田大山は、2種の梅酒をブレンドして完成させているらしい。
1つは、大山産の厳選した鶯宿梅を3年以上も長期熟成をさせた「3年熟成梅酒」。
もう1つは、3年熟成モノの鶯宿梅の梅酒をウイスキー熟成に用いたオーク樽でさらに2年間熟成を掛けた「樽熟成梅酒」。
この2つを4:6の比率でブレンドしたのが、日田大山だ。
このほのかなスモーキーさはオーク樽から香るものらしい。
ラム酒みたいな香り、というのは恐らくここから。
3年熟成させたお酒をさらに2年もの間オーク樽へ入れる――つまり、今飲んでいるこの梅酒は5年前の物、という事になる。時の流れが酒を造る、というのを実感する。
ストレートも良いが、ロックが良い。包み込むような優しい距離感に変わる。
強過ぎるコクが適度になり、飲みやすさが上がる。
水割りにしても良い。元々度数も高めで濃厚なので、水で割っても個性を失わず、味がボヤけない。
梅酒は基本的に食前酒としてもオススメではあるが、この日田大山はサラリとしておらず度数も高いため食中酒として扱うのが良いだろう。
そうグビグビと飲まずに、ここはひとつ、ウイスキーをいただくようにじっくりと時間をかけて味わうのが良い。
氷がカラン、と音を立て、時間とともに溶ける――徐々に移ろいゆく味わいを楽しむのも、これまた趣のある贅沢だ。