ねこらぼ( 'ω')

名古屋でこそこそと活動っぽいことをしている橋本ねこのブログ( 'ω')

シンプルに肉を食らう贅沢――「厚切り牛ヒレステーキ」をお取り寄せ

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僕は牛肉が大好きだ。一番好きな食べ物は牛肉である。

 

このお取り寄せグルメの執筆を始めてから約2ヶ月が経つ。

毎週金曜日に更新を続け、今まで9品を紹介してきた。

そんな中、牛肉は一度も登場していない。

 

これには理由がある。牛肉が好きなあまり、中途半端なチョイスが出来ないからだ。

 

牛肉は本当に値段とクオリティ(もしくは希少度)が比例する食材である。

高ければ美味しいに決まっている。だが、それは果たして手軽にオススメ出来る品なのか。

お値打ちな品なら手は出しやすいだろう。しかし、僕はおいしくてお得な物しかオススメしたくない。

牛肉に関してはこのバランス感覚がシビアであり、ことハードルが高い。

 

それらを踏まえて、今回取り上げるに至った牛肉をご覧いただきたい。

 

 

今回のお取り寄せ品

厚切り牛ヒレステーキ

今回取り寄せたのは、牛肉の中でも赤身中の赤身肉であるヒレ

最も運動しない肉の部位であり、そのため肉質は非常に柔らかい。さらに一頭から採れる量も限られているため、最高級部位として扱われる。

中でもヒレの中心部はシャトーブリアンと呼ばれ、高値で売買される。

 

脂身はほとんど無く、肉を噛み締める感触と味わいが楽しめる。

 

グラスフェッドとグレインフェッド

今回取り寄せたヒレ肉はグラスフェッドビーフである。

グラスは牧草、グレインは穀物。フェッドは餌の事なので、もうイメージは付くだろう。

 

グラスフェッドビーフは牧草を餌として育てられた牛。

基本的には牧草地で放牧するような飼い方となる。草食動物らしい味わいの肉質になる。適度な運動により身は引き締まり、サシは減る。

グレインフェッドは牛舎で穀物を餌とする。運動をあまりさせないため、サシが増える。

 

両者には栄養の面でも味わいの面でも差が出る。

日本ではグレインフェッドが主流。グラスフェッドには広大な土地が必要となるからだ。

しかし、そのおかげで日本では霜降りの和牛が育ちやすいとも言える。

 

これらは一概にどちらが優れているかを決められるものではない。

それぞれに良さがあり、まるで「赤ワインか白ワイン、どちらが優れているか」という討論のように果てが無く意味の無い物である。

 

 

お取り寄せしてみる

ヒレ肉は三角の形にコロコロとカットされている状態で売られる事も多い。

しかし、あれらはヒレ肉の中でも端の方だったりする。

 

ヒレ肉の中心がシャトーブリアンと呼ばれ珍重されるのと同じように、ヒレ肉の端はまた味わいが大きく異なる。

裏を返せばシャトーブリアンと呼ばれずにヒレと呼ばれる部位は中心の柔らかい部分では無いという証明ともなる。

ただ、もちろんヒレもピンキリ。ヘタなシャトーブリアンよりも、ちゃんとした(?)牛のヒレの方がおいしい事もあり得る。

ヒレに関しては精肉店でちゃんと見て仕入れるのが失敗が少ないだろう。

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今回取り寄せたのはステーキカットの180g。こぶしより大きいくらいのサイズだ。

パッと見ると大きそうにも見えるが、赤身肉でさっぱりしているので意外とペロリと食べる事が出来てしまうサイズである。

 

食べてみる――前の準備

解凍

まずは解凍。解凍にもコツがある。

なるべく温度変化は少なく、緩やかに、時間をかけて解凍していきたい。

 

食べたい日の24時間前くらいに冷凍庫からチルド室へ、12時間前くらいに冷蔵庫へ――と段階を踏む事が出来るとベストである。

もっと細かい温度設定が可能ならば、2℃、4℃…と刻んでも良い。

氷水に浸けておくのも悪くない。

 

温度変化が急峻だと、肉からドリップと呼ばれる赤色の液体が多く発生する。

この液体は旨みを含む。これらを逃さず閉じ込めて焼き上げれば肉汁となるのである。

というわけで、電子レンジ、流水解凍、室温解凍はオススメしない。

 

とはいえ、肉が食べたい欲求は突然発生するもの。

そうなったら電子レンジや流水での解凍も致し方ない。ただし慎重に行う必要がある。

休息1

解凍を終えたら、お肉を常温に馴れさせる。

いきなり焼くと肉がびっくりしてしまう。特に厚切りの肉は、内側が冷たいままなのに外側だけカリカリに焼ける――とかそういう現象も起きてしまう。

温度変化で急にお肉が縮む事によって肉汁も流出してしまう。

 

というわけで、ちょっと常温で休息を。

その間だいたい10分程度。待っている間に色々と準備を進めておくと良い。

下味

下味を付ける。塩や胡椒なんかを付けるわけだけど、塩を付けると肉の細胞内の水分が塩に吸い出される。これは浸透圧の関係で、生物の授業で習った通り。

よって、塩を付けたまま放置しすぎると肉の水分が抜けてしまう。

 

個人的な下味の最適解は、焼く5分前。4分前でもいいかも。

つまり、冷蔵庫から出して5~6分後に下味を付けて、その4~5分後に焼く、という具合。

 

今回はステーキ用のスパイスミックスを使用した。

肉料理向けにチューンされているので非常に便利。

全体に薄く、満遍なく下味を付ける。

焼く

焼く前にフライパンを十分に熱する。

じわじわ上がる温度変化を待っていると、表裏の焼き加減にムラが出てしまう。

チラッと白煙がひとすじ見えかけるくらいで肉を置く。

 

焼くときのセオリーは数パターンあるが、今回は「ずっと弱火」パターンを紹介する。時間はかかるが失敗が少なく、火加減も弱いため焦る必要も無い。

終始弱火で全ての面を焼き続けるだけだ。これは塊のような肉で有効。だいたい5cm~8cm程度の厚さの肉ならば今回の手法が使える。

網を使う場合、直火が当たらない場所で。炭を使う場合は炭の真上からは外した場所に肉を置くと良い。

 

焼く手法として、「最初に強火で焼き固めてから、じわじわ火を入れていく」という物もあるが、あまりオススメしていない。

表面を焼き固めてしまうと、焼き加減の判断基準を2つほど失ってしまう。外見判断が難しくなるのと、焼くときの音も変わってしまう。

さらについつい火を入れすぎてしまうリスクも高まる。ミディアム~ミディアムレア程度を狙うならばオススメ出来ない。そして、実はかなりの肉汁を流出させてしまう焼き方でもある。

この焼き方で美しい断面にするにはかなりの熟練が必要となる。

 

 

今回のサイズ――180g、厚さ5.5cm程度の場合、それぞれの面を3分20秒ほどずつ焼いていく。これだけで良い。簡単。

分厚いので側面もそれぞれ時間をかけて焼く。つまり6面を焼くならば、合計20分強ほど焼く事になる。

焼き加減は肉汁と音と煙と香りで、温度は周囲の油の中の泡で見極める。

 

全ての面が焼きあがれば完了。焼き目がもっと欲しければ、中火程度で両面をサッと焼き固める。

最後に表面を焼く事で、中央はレアのまま肉汁を逃さない焼き方が出来る。

休息2

焼きあがった肉はすぐに切らない事。

特にミディアムレア程度で焼いた肉は弾力があり、のこぎりのようにナイフを動かすたびにどんどん肉汁が溢れていってしまう。

 

焼きあがった肉には、この肉汁たちを閉じ込めるための休息を与える必要がある。

アルミホイルで包んで保温しておくのが一番。適度に全体の温度も均一化され、余熱で中心にじんわり熱を入れる効果もある。

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だいたい10分程度放置したのち、アルミホイルを開いてカットする。

完成

これが正しいミディアムレアである。

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よくあるのが、中心だけ赤くてグラデーションのように茶色に染まっていく様子の肉。あれは僕の中では美しいとは言えない。

こちらのようにメリハリのある中心部と、グリル感のある外側。これらをもってパーフェクトと言えると考える。

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食べてみる

さっぱりとした肉なので、アレンジの幅がある。

シンプルな岩塩と粗おろしのわさびを用意した。

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もしくはフライパンに残った肉汁にバターと醤油を入れてソースにしても良い。サーロインやリブロースならば、僕はこの手法で即席ソースを作る。

わさび醤油も良いだろう。わさびは肉の甘味を引き立てる。ちょうどスイカの塩のような役割だ。

 

肉の旨みがダイレクトに伝わるような、ガツンと来る赤身。

牛肉を噛み締めているような感覚がある。グラスフェッド特有のクセは感じるが、まさに肉を食べているような感じで個人的には好き。苦手な人はニンニクやハーブ等を多くしたり強めの味付けを選ぶと良い。

 

 

大半が肉の焼き方の解説になってしまったような気もするが、せっかくの命は最高の形でおいしく戴きたい。

ハレの日の贅沢といえば牛肉。ぜひ、日常の中に贅沢を差し込んで、メリハリや潤いを与えてほしい。