
発酵バターをご存知だろうか。
「名前は聞いたことがあるが、よく知らない」という人も少なからず居るような気もしている。
発酵バターは、その字の如く発酵したバターである。
なお、日本で通常よく見かけるバターは発酵していない。一方、発酵バターは原料に乳酸菌を添加する事で発酵させている*1。
昔はバターを作るときに乳酸菌が混入してしまう事はしばしばあった。だってチーズにカビが発生するのだもの、バターに乳酸菌くらい付く事は想像に容易い。
というわけで、むしろ昔は発酵していないバターの方が難しかった。そこから技術が進み、日本に入る頃には非発酵バターとなっていた。
さて、発酵バターには特有のホックリとした味わいとナッツのような濃密な香りがある。これらを活かせるような使い方がオススメだ。
特に素朴な焼き菓子に向いている。シンプルにパンに塗るのも良いだろう。
今回のお取り寄せ品
トラピストバター
北海道には数多の酪農家がひしめき、様々な乳製品ブランドが存在する。
そんな中、トラピストバターという発酵バターがある。
トラピストが作っているからトラピストバターなのだが、トラピストはただの酪農業者ではないのだ。
トラピストバターを作っているのは、トラピスト修道院という場所だ。
トラピスト修道院
北海道にある厳格なカトリックの修道会「トラピスト修道院」。
ベネディクト会から派生した中世フランスのシトー修道会を母体とする。このうち、厳格な規律を基にしたのが厳律シトー会ことトラピスト会である。
なお、このトラピスト修道院は男子修道院であり、女性は敷地へ立ち入る事すら許されない。
修道会の者は世から離れ、緑に囲まれた土地で質素で素朴な共同生活を行い、祈り、生涯を過ごす。
とはいえ、生活の糧としての労働が必要にはなる。トラピスト修道院では酪農や農業を行い、食品等に加工したりして販売も行っている。
これらはお土産としても購入可能で、品質も良い。北海道土産としても知られている。
特に有名なのがトラピストクッキー、トラピストバター、トラピストジャムあたりだ。
お取り寄せしてみる
各種物産展やネットショップで購入できる。
現地じゃないと買えない、という代物では無い。比較的入手も難しくはない。
こちらのトラピストバターは発酵バター。
フランスのシトー会修道院をルーツとしているだけあり、伝統製法を用いているようだ。

レトロな風合いの缶に入っている。
表面イラストの建物は修道院の本館。トレードマークである灯台は所在地付近の葛登支灯台に由来する。

缶を開けると、みっちりとバターが入っている。
四角いバターに見慣れていると、とても新鮮だ。
食べてみる
トースト
まずはシンプルにトーストに乗せて。

バターは20℃程度で溶けてしまう。かといって固いままでは使い勝手が悪い。一度溶けてしまうと成分が分離してしまうし、取扱いには注意を要する。
少しだけ常温に置いて、取り分けやすくなったところで必要分だけカットして、その後直ちに冷蔵庫へと仕舞うのが良いだろう。
トーストの熱でバターがじんわりと溶けてくる。
厚切りなパンならば、あらかじめ切れ込みを入れておくことでバターを内側まで馴染ませる事ができる。
じゃがいも
次に、じゃがいもと合わせてみる。いわゆるじゃがバターだ。

じゃがいもは切れ込みを入れておく。しっかりと加熱したつもりでも意外と中が温かくなかったりするもの。
薄くバターを付けて下味を付けて焼く。外側がこんがりとしてきたら、さらにバターを乗せてもう少し加熱して完成。
じゃがいものホクホク感とバターのコクがマッチする。
意外と味が薄くなりがちなので、下味が重要。有塩とはいえ、バターだけだと塩味が足りなく感じてしまうかも。
わさび
続いて、バターに材料を混ぜる手法を取る。
例えばレモン果汁や果肉を入れたレモンバター、刻んだバジルを混ぜ込んだバジルバターなど。これらは特に魚料理に良いだろう。
最近だとバニラバターというものもあり、こちらはトーストによく合う。
今回作るのは「わさびバター」。肉によく合う。
作り方は簡単で、バターとわさびを2:1のバランスで練り込むだけ。
分量をボウルなどへ取り、バターが溶けてきたらしっかりと混ぜ合わせて完成。
赤身の肉と合わせると良いだろう。好みでちょっと醤油を垂らすのも良い。
醤油とバターもまた、相性は格別だ。

まとめ
発酵バターは普通のバターと同様に扱えるが、更にコクや香りを活かす事が出来る。
存分にバター感を楽しみたいときには、発酵バターは最善手となるだろう。
様々な発酵バターが出ているが、このトラピストバターも根強いファンの多い品。試した事の無い人も、買っても損は無いだろう。
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*1:完成したバターに乳酸菌を練り込んだものも分類上は「発酵バター」と呼ばれる。