ねこらぼ( 'ω')

名古屋でこそこそと活動っぽいことをしている橋本ねこのブログ( 'ω')

禁断のお酒?!――「アブサン」を飲む

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アブサンというお酒がある。

検索すると眉唾な情報がゴロゴロ出てくるので、興味があったらそちらも参照されたい。

 

いわゆるハーブ系リキュールの一種であるアブサン。

曰く付きのお酒となった背景には色々な要素がある。

 

 

アブサンの歴史と特徴

芸術家の愛好家が多い

アブサンは画家文筆家が愛していたお酒だ。

1800年くらいに誕生した時は薬草をベースに作られただったが、何だかんだあってアブサンという酒になった。

有名なところではゴッホピカソモネなんかも愛飲していたとして知られている。

 

これらの芸術家は一般的な人とは変わった行動を行ったり、自ら死を選んだ者や精神的な病を患った者も少なくない。

中にはアブサンが原因とする説すらある程だ。成分については後で触れるが、アブサンが別名「悪魔の酒」「破滅の酒」とも呼ばれる所以となっている。

 

芸術作品で多く登場する

太宰治芥川龍之介の作品中にもアブサンが登場することから、彼らとアブサンにも少なからず関わりがありそうだ。

 

他にも画家がアブサンの絵を描いていたりもする。

ヴィクトル・オリヴァの描いた「アブサンを飲む男」では目の焦点の定まっていない男の前にアブサンと同じ緑色をした半透明の女性が現れるという、幻覚症状のような描写もある。

アブサンは往々にして没落喪失感憂鬱などの表現として使用されていることからも、近寄りがたい雰囲気が漂う。 

 

有毒成分が含まれる

何を以て"有毒"とするのかは難しい――例えばアルコールそのものも人体には有毒であるからにして、ビールやワインも毒物と見做す事は出来る。

 

アブサンの人気が高まったヨーロッパでは廉価な粗悪品が出回るようになる。

アブサンの主原料のひとつであるニガヨモギには、向精神作用のあるツジョンが含まれる。粗悪品はこのツジョンの残存濃度が高かった。

ツジョンによる中毒・幻覚症状が直接的な原因かは置いておき、アブサンブームとヨーロッパでの犯罪・自殺数の高まりは比例した。

 

これらの件により、アブサンの製造、販売等に対して規制が入るまでとなった。これが1915年頃のこと。日本は大正時代である。

さらにアブサンに対する「禁忌」の念は強まる事になった。

 

いくつかは信憑性に疑問も

当時の粗悪品による中毒症状の真偽は不明で、幻覚が出るほどのツジョン濃度は無かったとも言われる。

が、ツジョンの濃度がそこまで無くてもたくさん飲めばそれだけ体内に摂取する事になる。

 

そもそもお酒を大量に飲む事は体によろしくないため、ツジョンのみが直接的な原因かは不明である。

仮にアブサンを常飲したとしても、ツジョン中毒になるよりも先にアルコール中毒になるとも言われている。

 

なので、アブサンの普及とともに悪影響が現れたという事実に対する検証としては、アブサンの粗悪品が出回った時の内容物には様々な化学物質も含まれていたため、そういった成分が人体に悪影響をもたらしたとする方が自然ではある。

 

また、奇怪な行動を取った人がアブサンのみを飲んでいたわけではなく、他にも様々な麻薬等もあったわけで。

アブサンだけを悪者にしてしまうのは些か早計であると言える。

 

やや尾ひれの付いた部分をあるとは思うが、これらの一連の事件や愛飲者、成分の疑惑等により、スキャンダラスなお酒となった。

 

一方、日本では…

実はヨーロッパ各国でアブサンが禁止になった頃、日本や一部の国では特に禁止はされていなかった。

とはいえアブサンの製造自体が少なくなってしまったので、日本での流通も少なくなった。

しかし1950年代にはサントリー等の国内メーカーからも販売されていたという…もちろん現在はデッドストックである。

 

そして解禁へ

その後、WHOがツジョン残存量が10ppm以下ならば安全とのガイドラインを発表。

アブサンそのものにどうしても中世の錬金術や薬学なんかの香りが漂っているので昔の出来事な感じがするが、このWHOのガイドラインが制定されたのは1981年。1915年に禁止となってから約65年振りの解禁となった。

 

 

お酒としての特徴

アブサンはニガヨモギを用いた緑色のリキュール。ニガヨモギだけ、ということはなく、アニスやウイキョウ等、様々なハーブやスパイスを用いる。

たまに無色のアブサンもあるが、やはりアブサンのイメージは緑。わざわざ緑の着色料を使うアブサンも少なくない。

 

度数はかなり高めで、50度を超えるものが多い。

原料内の油分が多く、加水(水割り)すると光が乱反射する事により白濁する。

透き通るグリーンが白濁する様は、まさに錬金術のよう。人々を魅了するのも頷ける。

 

その飲み方にも流儀があり、アブサンを少量注いだグラスの上に穴の開いたスプーンを橋渡しさせる。そこに角砂糖を乗せて、さらにその上から水を垂らし、砂糖を伝わせて静かに加水をしていく。これがトラディショナルな飲み方。クラシックスタイルとも呼ばれる。

アブサンは複数のハーブが混ざり合った繊細なリキュールであるという特性から、水は静かに注げば注ぐほど良いとされている。閉め切ってない蛇口のような水量でポタポタと滴下していくのだ。

 

この飲み方で用いる専用のスプーン、専用のウォーターサーバーがあり、オーセンティックなバーではそれらを揃えている場所もある。

ただしこれらの道具は専らアブサンでしか利用しない上、そもそもアブサン自体がマイナーなお酒であるため、一式を揃えているバーはそこまで多くない。

 

角砂糖に火を点ける飲み方も

飲み方の一派にはスプーン上の角砂糖そのものにアブサンを注いで、アブサンを含んだ角砂糖に火を点けるというスタイルもある。そして火の付いた角砂糖の上から加水を行い消火する、というものだ。

火を点ける事にはパフォーマンス的な側面が強いと思っている。それこそ錬金術を思わせるような。「これからアブサンという特殊なお酒をいただく」という雰囲気を作る、そういう導入的な要素。

 

しかし、デメリットとして火を点ける事によってアブサンには焦げ臭さが付いてしまう。(あとはシンプルに危ない。)こうなると繊細なハーブの香りどころじゃない。

しかし世界観の導入としては悪くないと思う。不思議な作法により導かれる"味"もあるだろう。

 

 

アブサンを買う

そんな曰く付きのお酒、アブサン。

実は探せば買う事が出来る。何も飲めるのは限られたバーだけでは無い。

 

とは言っても、需要が高くないため取り扱う業者・メーカーはかなり少ない。

ロドニクス アブサン クラシック

スペイン産のリーズナブルなアブサン。伝統的なものに近い。

ニガヨモギ含有率は高いとされている。ボタニカルやハーブも最高級の物を使用しているらしい。その割には安い。

度数は70%。


 

グリーンツリー アブサン

チェコ共和国のグリーンツリー蒸留所のアブサン。こちらは比較的ポピュラーなアブサン。

チェコは先のアブサン禁止の対象にならなかった国のひとつ。苦み強め、度数も高めの70%。

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ペルノー アブサン

元祖アブサンと呼ばれるペルノ―のアブサン。1797年にペルノ―が初めてアブサンを商品化したとされる。

そんなアブサンの中のアブサン、ペルノ―のアブサンは爽やかながらも鮮烈な味わい。度数68%だけど、なんか低く感じる。(感覚麻痺)

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ペルノ アブサン 68° 700ml リキュール
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AKAYANE アブサン クスシキ 2020

今回仕入れたのは「佐多宗二商店」の「AKAYANE アブサン クスシキ 2020」。

佐多宗二商店は焼酎の「晴耕雨讀」や「不二才(ぶにせ)」が有名な酒造メーカーである。

 

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このAKAYANEのアブサン、「クスシキ」は2018年から毎年リリースされていて、2018R1(令和1年=2019)、2020が存在する。もちろん全部配合が違う。マニアック。

2018は度数53%、使っているハーブやスパイスは39種類。

R1は度数55%、何故か緑色ではなく青色に仕立てられている。

そして2020は度数55%、45種類のボタニカルを使用している。

 

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クスシキというのは薬の語源らしい。

くすしきもの」という意味で、「不思議な」とか「神秘的な」とかそういう意味合いを持つらしい。

まさにアブサンにぴったり。また、クスシキの入る乳白色の瓶は薬を入れる瓶と同じ素材だそう。紫外線を防ぎ、アブサンの劣化を最小限に抑える。

 

原材料
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クスシキ 2020が公開している原材料はこんな感じ。

  • 山椒
  • 生姜
  • よもぎ
  • にがよもぎ
  • スターアニス
  • 昆布
  • フェンネル
  • 黒ごま
  • 桜島小みかん

これで11種類。あと34種類もの何かしらのハーブやスパイス、果物が入っているらしい。

どことなく和を感じるようなボタニカルが多い。

ニガヨモギは自社の畑で完全無農薬で栽培しているというこだわりようだったりする。

 

 

アブサンを飲む

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グラスに注ぐと見事なエメラルドグリーン。

ゲームだったら毒とも薬とも取れる色合いの飲み物だ。

ストレート

まずは加水せずにいただく。

最初に鼻に来るのは、スイカとミントを合わせたような清涼感。

複雑でありながらも均整の取れた味わいの奥に、柑橘のフレッシュな残り香がほんのわずかに残る。

 

他のアブサンよりも度数が低いとはいえ、度数は55%。たいていの人はこれらの要素を感じる前にアルコールの喉の焼ける感覚に苛まれてしまい、原材料を探るどころではないと思う。

アブサンそのものにオイリーさもあるので、何か燃料でも飲んでいるような気分にすらなるかもしれない。

 

加水する

加水していく事で飲みやすくなる。水を入れることで、ストレートでは感じづらかった香りが花開く。

具体的に何が、と言われるとちょっと曖昧だが、加水する事でより和のテイストが強調される感じがした。

同時に尖った部分が水でマイルドになるので、かなり飲みやすくなる。

 

水を入れれば入れるほどもちろん飲みやすくなる。とともに、(別にもはやアブサンでなくてもいいのでは…)という味にもなっていく。

楽しめる限界は1:2程度か。それ以上だといよいよ味がぼやけて、「なんか苦い水」って感じになる。

 

割ってみる

アブサンをソーダで割ると、ビターでドライな個性あふれるハイボールのような雰囲気で飲める。これはこれでアリ。

コーラで割ると、クラフトコーラのような複雑な味わいが楽しめる。これもアリ。

他にも柑橘系ジュースで割るのも悪くなさそうだ。

 

 

まとめ

アブサンは数々の創作を行う芸術家に愛されてきたお酒だ。

そんな曰く付きのお酒をグイっと飲めば、もしかしたら何かを閃くかも…?

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