ねこらぼ( 'ω')

名古屋でこそこそと活動っぽいことをしている橋本ねこのブログ( 'ω')

星空を模した"映え"な和スイーツ――彩雲堂の「満天」をお取り寄せ

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"映え"――すっかり「インスタ映え」なんて言葉も浸透しきっているが、こと食品・料理に関しても視覚要素は重要である。

決して単にミーハーな要素というわけでもない。

 

ともすれば、視覚情報は味覚情報よりも重要となることすらある。

視覚は味覚に先立つ。味わう前に目で見るわけだから、視覚は重要だ。

 

例えば牛丼。

牛丼はご飯の上に煮込まれたブラウンの牛肉と透き通った色の玉ねぎがあり、赤い紅しょうが、黄色の卵…とコントラストがあるからシズル感があるのだ。

もし仮に最初から全てが一緒くたに混ぜられてしまっていたら、おおよそ食欲は湧かないだろう。

この事からも見た目の要素は重要な事が分かる。

 

インパクトを残して、"ゼロ"を避ける

このデジタルネイティブな現代に於いて、視覚情報にはインパクトが必要だ。

ネット社会に身を置く者ならば、日々大量の視覚情報を自然と(もしくは受動的に)受け取り続けていることだろう。

例えばSNSならタイムライン。ネットニュースでも良い。僕ならば企業のプレスリリースもよく読む。これらは一日を終えて最後に一日分まとめて見るだけでもドッと視覚情報が押し寄せる。そしてそれぞれに充てられる時間なんて、せいぜい長くても数分。短いと数秒、もしくは一瞬でスワイプされてしまう。

だからこそ、インパクトが必要なのだ。鮮やかさ、意外性、創意性…本質よりもそういった装飾みたいな部分が重視されるのは本筋から外れてしまうが、しかし全く印象にすら残らなければまず土俵にすら上がれないのだ。

認知されていなければゼロ。ゼロにそのあと100を掛けてもゼロのままである。

この認知されていないゼロの状態をせめて一瞬目に付く0.1くらいにしておきたい。「無」と「0.1」の差はあまりにも大きい。

 

時代に適応するための、"映え"

「視覚を重視する」という事は土俵に上がるための、つまり生き延びるための戦略でもある。

かつて海から陸へ生物が適応していったように、時代の流れを察知して生き方は変えていかねばいけないと思う。

 

その中での"映え"を重視する風潮は、ある意味ではごく自然な流れとも言える。

最近の飲食店・食品業では、そういった"映え"に特化した話題性のある商品をひとつ作り認知を図ったあとに、本筋・王道の商品への道を作るという手法を採る事が増えてきた。

とはいえ、映えに特化するとどうしても方針がズレてしまう場合も往々にして存在する。軸や看板商品はブレることなく、バズらせる狙い用の商品を開発する事が多いし安全だと思っている。

 

今回のお取り寄せ品

彩雲堂の「満天」

今回はそんな"映え"にフィーチャーした和菓子をお取り寄せしてみる。

和菓子は元々器用な細工を施すものも多く、実は"映え"との親和性は高い。

どうしても若年層の利用の少ない和菓子だが、動物を模したり創意を凝らしたりしながらなんとか幅広い層の取り込みを図っている。

 

彩雲堂の出す「満天」は、いわゆる羊羹である。どうやら夜空の柄をした羊羹とのこと。

彩雲堂について

今からざっと150年前の明治7年に開業。70年ほど前に今の彩雲堂という名前になった。

松江に多く存在する御菓子司のひとつであり、現在6代目である。

看板商品は「若草」という新緑のような彩りを纏った求肥。

 

松江市について

彩雲堂のある松江という街にも触れなければならない。

 

島根県松江市は、実は全国的にもトップクラスの和菓子どころである。

その背景としては、生活に深く根付いている「抹茶を常飲する」という習慣がある。それも格式張ったものではなく、生活の一部として茶を点てて飲む習慣が残る。

京都以外で抹茶を立てる習慣がある街は、現在に於いては全国的にも珍しい。

 

茶の文化があれば、そこには和菓子の文化もある。

というわけで松江市は和菓子の老舗も多く存在し、またそれぞれのレベルも非常に高いのだ。

 

 

取り寄せてみる

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満天」と名の付く羊羹がある。

夏の和菓子として、夜空を見事に表現した羊羹とのこと。

しかしこういう和菓子はたまに商品写真と現物が違い過ぎる時もあり、これまた話題に登ってしまう事もある。

実際の所、どうなのか…文字通り満天なのかどうか。

 

羊羹1本で1,404円

羊羹1本あたりの相場としては、シンプルな物ならばだいたい1,000円を切るくらいだ。栗などの入ったものは1,000円を超えるくらいとなる。

よって、この価格は羊羹としてはちょっとだけお高めと言えるだろう。

自分で楽しむものというよりは、誰かと一緒に楽しんだり、それこそこの時期だったらお中元などにも悪くないだろう。

 

藤色の箱には「満天」の文字が入る。

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散りばめられた金箔が雅やかだ。

 

箱を開けてみると、なるほど確かにこれは素晴らしい。

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夜空を模した濃藍色。その合間を行く白い雲。そして金箔が星々のように煌めく。

見上げた夏の夜空のような、息を飲むような美しさ。まさに満天の名が相応しい。

 

食べてみる

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上下二層になっている。

 

上の層は寒天質の、いわゆる「錦玉羹」。寒天を溶かして糖分を加えて固めたタイプの和菓子だ。

透明感があるため、中に餡を入れたり細工がしやすい。涼し気な見た目から夏菓子によく利用される。

 

下の層は小豆を使った羊羹となっている。とても滑らかな漉し餡。

 

上下の層ともに甘みは強い。が、下の小豆羹の甘みがより強いため、上の錦玉羹は甘さ控えめに感じる。

肝心の味わいとしても、しっかりと丁寧な作りとなっていておいしい。決して見掛け倒しでは無い。

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横から見ると、夜空部分の錦玉羹は意外と鮮やかな藍紫色。

下の層と合わさって、上から見る事であの夜空の色が再現出来ているのだ。これは計算された妙技。

 

 

羊羹はカロリーが高い。比較的保存の利く羊羹は非常食に用いられることがあるくらいだ。

なお、この満天を一度に全部食べると1,400kcalとなる。

 

この期待を裏切らない見た目、鮮やかさ、そして夏らしさ。

夏のちょっとした団欒のお茶請けに、たまにはこういう凝った和菓子も悪くないだろう。