埼玉にあるラーメン屋「ぜんや」。
カップラーメンや冷蔵タイプの麺としてネット上で買う事が出来るので、名前や味を知っている人もいるのかも。
もしくは意図せず口にしている人も居ても不思議ではない。
有名になった店には立地はもはや関係無いのかもしれない。
埼玉県の中心部から逸れた新座市に構え、行列が行列を呼ぶ人気店である。
カウンター8席の小さな店内。スープは無くなり次第終了で、夕方には終わってしまう。
全国から人が集まる。何がそんなに人を惹き付けるのか。
今回のお取り寄せ品
「ぜんや」のラーメン
1999年創業。お店の場所こそ創業当時と若干変わっているものの、その味や見た目は変わらない。
手掛けるのは塩ラーメン。最近だとハマグリや鶏などをフィーチャーした塩ラーメンが多いが、そういう一つの素材に極振りしたラーメンではない。
そういったラーメンが出るよりも前から存在する塩ラーメンである。
もちろん何か一つの素材をピックアップしたような塩ラーメンもおいしい。
しかしぜんやの塩ラーメンはそういったラーメンとは一線を画すものだ。スープについては実際に食べた時に感想とともに後述する。
塩ラーメンについて
塩ラーメンはシンプルなため、素材の味を出しやすい。
逆に言えば、丁寧に作らなければ塩味である必要は無くなるし、かと言って控えめに作ればパンチやインパクトの無い味わいとなる。
塩ラーメンは塩しか使っていないわけでは無い。鶏や豚骨を煮る事も多いし、野菜出汁や魚介の出汁を使う事もあるし、副材料として醤油などを使う事もある。
塩ラーメンの共通認識として、スープの色は比較的澄んでいる。
これはスープを強く煮たたせることがないため。強火で煮込むと脂肪等がお湯に乳化するため、白濁する。
中には白濁させた塩ラーメンも存在はするが、基本的には澄んだ色のスープであることが多い。
お取り寄せしてみる
前回に引き続き、こちらも銘店伝説の極魅(きわみ)シリーズ。
銘店伝説は全国のラーメン屋の入魂の一杯の商品化を行っているが、この極魅シリーズはその更にワンランク上の製品となっている。
価格も税込648円と、決して安くはない。しかし家に居ながらにしてお店の味が食べられる…いわゆるデリバリーやテイクアウトとして考えるのならば、めっぽうに高いというわけでもない。
こちらも中には具材が入っている。
麺とスープ、そしてメンマ、チャーシュー。
チャーシューはご丁寧に2つの袋に分かれ、2種類が入っている。
これは店舗でもモモとバラの2種のチャーシューを乗せていることに由る。
あとは白ネギとほうれん草も欲しい所…こちらは自分で調達するとする。
しかし、付属の具材だけでも十分な一杯が出来上がるだろう。
作ってみる
作り方は外袋の裏に記載があるので、しっかりと読む。
先にスープやチャーシュー等の具材を袋のまま温める。
ボイルすると袋が破損する恐れがあるので、お湯につけて温める。
同時進行で沸かしておいた寸胴で麺を湯がく。その際にスープ用のお湯も別でスタンバイ。
茹で時間は2分半~3分。その間にスープは完成させておく。
あとは茹で上がった麺を湯切りし、スープへイン。具材を乗せて完成となる。
食べてみる
まずはスープを一口。塩ラーメンらしい、優しい味わいに包まれる。
鶏と野菜の出汁を感じるが、その奥には魚介も居る。なんとも複雑なスープ。
豚骨や醤油のエッセンスもあり、様々な素材が三位一体。いや、もはや魑魅魍魎といった方が正しいかもしれないレベルで様々な味わいが見え隠れする。
現状、僕が食べた塩ラーメンの中では日本一複雑なスープだと思っている。
クドさは無いが、味はしっかり。鶏由来のような油感もある。
麺は中太。噛み応えがある麺で、スープをよく絡める。
麺はラーメンを構成する材料としては、あまりに大きな要素。店主のこだわりがビシビシ反映される部分。
これより数ミリ太くてもダメ、数ミリ細くてもダメだったのだろう。と考えると、麺1つ取っても趣深い。
具材は付属のチャーシュー2種とメンマ、そしてこちらで用意した青物と白ネギ。
メンマは食感も良く、いいアクセント。
こだわりの2種類のチャーシューは厚さもあり、しっかりとジューシーさもある。モモは食べ応えがあり、バラは脂もおいしい。
具材に関してはかなりのやり取りがあったんじゃないかと想像される。
限られた原価範囲内でどこまでこだわりを注入するか――クオリティを上げれば値段も上がる。妥協すれば「こんなもんか」と思われてしまう。
制約の多い中、手が抜けない商品作りの難しさが伺える。
夢中で食べきってしまった。いつの間にか完食してしまっている、そんな味。
名古屋で言えば、系統的には如水に似ている感じもする。
奥の深い塩ラーメン界の至極の一杯、味わってみてほしい。