こんにちは。名古屋で年中ステイホーム、橋本ねこです。
先日、こんな記事を上げまして。
案件やお仕事としていただく諸々の値段についてのお話。
僕の扱う案件たち――楽曲制作・鍵盤演奏・レコーディング・Mix・映像編集・デザイン等々はどうも実態が掴みにくい。その不透明さというか霧がかかった様なモヤモヤ感はどうしても拭いきれない。
これは僕だけに限らず、こういう「実体を伴わない技術提供」はどうしても価格を付けづらい。
なぜ価格を付けづらいのか
これには大きく2つ理由がある。
理由①:価値の感じ方にズレがある
作り手と受け取り手が価格の感じ方にズレがある場合は多い。
例えば僕の周りの某案件の相場が5万円だとしても、相手の周りでは「それくらいなら3万円でやってもらったよー」みたいな人ばかりかもしれない。そうするとズレが出る。
このズレは埋めようがない。ジャンル、地域、年齢、規模、使い道…などの様々な要素によって大きくブレるので、単純に他の案件との比較も出来ない。
理由②:原価が見えづらい
楽曲制作は、案件を出した側からすれば「無から金を生み出す作業」にも見える。まぁそうなんだけど。
なので、元手ゼロでお金を生んでいるようにすら見られる。もしくは百歩譲って1時間あたり1000円くらいで換算されたり。
しかし、単純に時給では計算できない。
例えば僕の場合はピアノのアレンジならば最短即日、時間にして2時間程度で納品する事もある。じゃあこれで2,000円、というわけにはいかない。
時給で換算するとして「アマチュアの方だったら10時間くらいかかる所を2時間くらいで仕上げた」という話だとしたら、前者の方が高くなっちゃう。それならダラダラ仕事をした方が儲けられてしまう。
技術にはそれを習得するために費やした時間・費用が加味される。
そういう見えないスキルや諸々の積み重ねによって、その速度とクオリティで仕上げる事が出来る。
…のだけど、それって見えづらいし、わざわざいちいち説明するのって何と言うか押しつけがましいし、あんまり…ね?
昔はその"見えない価値"に気付かなかった
僕は今でこそ楽曲のミックスや動画編集も出来るけど、昔はもちろん素人で。
習得したきっかけは単純。「えっ、依頼として出すときの価格高っ…それなら自分でやるわ」である。
1時間程度で済むミックスで30,000円、ちょっとエフェクトを足しただけの動画編集で40,000円…。当時の自分は全く納得いかなかったのである。
しかし、実際にやってみるとこれがなかなか上手くいかない。
でもミックスと動画編集はゆくゆく絶対自分で出来た方が良いし、依頼として外注するにしろ共通言語でやりとりするために必要だなと感じたので、習得した。
ミックスに関しては、最初はコンプすら分からず、フェーダーとパンだけやってマキシマイザーで音割れしないようにして終わり…程度だった。
そこからわざわざ大阪のエンジニアの元に毎月通ったり、色々なエンジニアがミックスするときのそれぞれの手の動きを観察したり。そういう部分を見る事によって、細かい技も習得したし、作業効率の面でも考え方が変わった。
そしてもちろん今も、ずっと全ての技術はブラッシュアップし続けている。
さて、今現在は仕事としてそれぞれを受けているが、そうなるまでにどれだけの時間と費用を使っただろうか。
ミックスに関しては7年前くらいに大阪に通ったりしてやりとりをしたりして、動画に関しては4年目くらいだ。前述のように大阪へ通ったり様々な機材・教材を買ったりしている。
収支バランスを考えたら全然真っ赤である。
この辺は仕事にしたくて習得したわけではないから、別に赤でも構わないんだけどね。
一旦、価格を決めてみた
そういうバックグラウンドがあるので、価格は非常に決めづらい。
同業者でも全然値段が違うし、逆に依頼すること自体にネームバリューがある著名な方ならば全然クオリティが伴っていないくせに一丁前に値段が高い人だっている。
ともあれ、全く価格の提示がないとそもそも依頼として出しにくいだろうとは感じた。
例えば僕がとある品が欲しくてサイトを見て見積もりを出すとしても、だいたいの価格が書いてあるサイトと価格の記載の無いサイトだったらば前者から先に見積もりを依頼する。
作曲とはいくらくらいするものなのか、一曲ピアノで弾いてもらった場合は、デザインは、とそういったあれこれに細かく値段を付けてみた。もちろん最終的には値段のブレが出るが、なんとなく目安を漠然と把握するためのスケールとして役には立ったはずだ。
価格は自分だけが決めるものじゃない事に気付いた
しかし、何度も触れているように価格はズレる。納期がタイトなら価格も高くなるし、最終的に求めているクオリティや作業内容でグラグラにブレる。
さらに、それに対して毎回「じゃあ今回はこれくらい」とすること自体にブレがあってイヤだなぁという思いはあった。
一見すると全く同じ案件・条件でも、何かしらがちょっと違うとブレる。これをカオス理論という。どうでもいいね。
そこで気付く。
相手にももちろん予算というものがある。予算という名前になっていなかったとしても「だいたいこれくらいじゃね?」とか「これ以上は出せない」とかはなんとなく決まっているはずだ。
それならば相手に価格を委ねてしまってはどうだろう?これが今回の価格改定の源流となる。
相手が思っている価格から剥離する事は案件不成立・交渉決裂の材料となる。
この機会損失は勿体ないと思っていて。実際の完成品を見ていないわけで、想像上でコストと比べて見送りするのはちょっと早い。しかも一度そういう形で断った方ってリピートされることはほぼ無い。探せば同業者だってたくさんいるしね。
ならば相手に寄り添った値段にして、その第一ハードルをクリアしやすくしたい。
いわゆる"言い値"だ。言い値を採用するにあたっていくつか約束がある。
①最初の案件にのみ適用
2020年5月1日を基点日とし、その日以降の最初の案件について適用とする。
再度の依頼であっても異業種(例えば楽曲制作のあとにデザインの依頼、など)ならば再び適用される。
②決めてもらった価格にいちゃもんを付けない
僕は決められた価格に対して何も意見をしない。価格を理由にして断ることもしない。
②価格によって仕事に差を付けない
100円であれ100,000円であれ、仕事のクオリティに差は付けない。手を抜くのはポリシーに反するしね。
③必要であればこちらからの価格提案もする
全く相場が分からなければ、もちろんこちらからも価格提案は出来る。
④値段を理由にせず断る事はある
例えば「ウチの風呂掃除を3円でやって!」みたいなのは断る。案件内容が事業に見合わないと判断するからだ。30万円だったらやるかもしれない。
つまり、基本的には完全に言い値通りに行うのだ。こちらからは求められない限り意見や否定もしない。
そして価格と仕事のクオリティは比例させない。僕はオークションがやりたいわけではなく、間口を広げたいのだ。
これを機に冷やかしがてら案件を振ってくれても良いし、「よそは●●円でやってたよ!」って某電器屋さんのチラシを持ち込む的な持ち掛け方をしてくれても良い。
お金の無い方にもどんどん気軽に使ってほしいし、お金がある方はチップがてら弾んでくれても良い。
かなり自由度が高く、使い勝手も良いシステムだと思う。とりあえず相談だけでもぶち込んでみてほしい。
ユニークでファンキーでキラキラした案件、お待ちしています。