ねこらぼ( 'ω')

名古屋でこそこそと活動っぽいことをしている橋本ねこのブログ( 'ω')

【アレンジの裏側】-hello.-[stay home ver.] / こらた(just kidding)

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普段と大きく変わってしまった日常。

たかだか数ナノメートルのウイルスが世界的に流行してしまい、数か月前とはすっかり状況が変わってしまった。

 

周りでも色々なアーティストたちが色々と趣向を凝らした試みを行っている。

今まで手を出していなかった領域、挑戦。方向転換。などなど。

たまに思わず舌を巻くようなアイディアが生まれたりもしている。怪我の功名ではあるけども、環境を変えざるを得なくなった人たちの閃きの鋭さと感性に驚かされ、それと同時に新たな時代の風を感じたりもしている。

 

 


 

 

ある日、こらた氏から依頼が届く。

それはピアノとボーカルのみのシンプルなデータ。そのピアノのアレンジをしてほしいという依頼。

 

アレンジの依頼で最も大事なのは、作業効率でもクオリティでも価格でも無い。相手の性格・嗜好やニーズをいかに汲み取れるかだと思っている。

まずは相手の性格やバックグラウンド――どういう音楽を演っていてどういう音楽を好んでいるかまでを掴めるとベスト。初回の依頼よりもリピートの依頼の方がスムーズになってくるのはこの辺が理由。

そしてニーズを汲み取る。相手が「何を求めているのか」「なぜ自分に依頼したか」を考える。前者はもちろんとして、後者を考えると他との差別化方向性の決定付けが出来る。

これらを考えることで、「自分の色を出しつつも相手の要望を汲み取ったアレンジ」をすることが出来る。

 

 

例えば僕は寿司屋さんをやっていたとする。へいらっしゃい。

そこに依頼主(生産者)が「最高の黒毛和牛が入ったよ!これで料理作ってよ!」って持ってきたとする。

ここで、大ぶりな絶品ステーキを焼いたらちょっと違うのである。もちろんおいしいだろうけど。

相手がなぜ寿司屋である自分の所に肉を持ってきたかを考えなきゃいけない。そこから察するに、まずはフレンチやイタリアンとして仕上げる選択肢は無くす。…という具合に絞っていく。

 

もちろん依頼主が"無類のステーキ好き"だったら話が変わる。

いかに寿司、もしくは和食のエッセンスを盛り込んだ自分のフィールドの中でステーキをクリエイトするかを考える。

その上でステーキに飽きてきているのか、新たなステーキの可能性を見たいのかを判断する。斬新か、王道か。シンプルか、複雑か。

 

このように、相手のバックグラウンドやニーズ等の要素で目指す方向が随分と変わるのである。

幸いな事に、音楽は料理と違って作り直せるので、僕の場合は最初の全体像が見えるまではスピード感を大事にして制作している。

 

 

 

最初のアレンジは割と僕の持ち味を多めに付ける。

何故なら、たくさんアレンジされた物から依頼主が引き算する事は出来るけども、無いアレンジから依頼主が新たなアレンジを付け加える事は難しいからだ。

ピアノのアレンジならば、僕にしか浮かばないものやちょっと凝ったものなどを最初に忍ばせておく。それを気に入ってもらえればそのまま採用だし、そぐわないならば後から取れば良い。

さっきのステーキで行けば、アレンジをする過程でローズマリーを使うのは依頼主でも思い付くだろう。例えばここでフェンネルを提案してみる。そしたらそのフェンネルに対してアリかナシかをジャッジしてもらえばいい。これは一旦「フェンネルを加える」という議題を提示しないと引き出せない話し合いだ。それでこそアレンジ依頼の意味があると思うし、そういう自分にしか出来ない提案を大事にしたい。

 

もちろん、依頼主がインスパイアを受けて新たなアイディアを提案してくれることもあるけど、それにしても最初の提示は大事。

最初にある程度僕らしいカラーを出したものを作って、それを基準として「もっと派手に」とか「ここでこういう音が欲しい」とかの要望を貰った方が早い。

 

さて、あとは「自分の色をどれくらい出すか」だ。

案件によっては完全に黒子、裏方に徹する場合もある。もしくは共同制作くらいのノリでゴリゴリに前線に出てくるときだってある。

前者は歌い手・アイドル・ゴーストライターなんかの案件で多く、後者はアレンジャー兼プレイヤー的なシチュエーションで多い。

 

 


 

 

そんな感じで、諸々の要素を複合的に考慮しつつ、初版をサクサクっと仕上げる。

僕は納品速度には業界内トップクラスの自信があるので、ピアノのアレンジ案件ならば即日。早ければ1曲2~3時間とかで終える。

その後、数回のやりとりを経て、完成だ。1日1提案のペースでラリーを行い、3日くらいでアップ。

 

今回の案件では、ボーカルのデータとピアノのデータを貰っていた。

ボーカルのデータはほぼ完成形。ピアノのデータはコード感のあるアルペジオ、ある程度リズムの構想があるフレージングがなされていた。

そのフレーズが印象的で、曲の骨組みになりそうだったのでそのまま採用。そして、それを踏まえて水の流れのような淡々としたピアノを構築する。どこで盛り上がった山場をもっていくかは悩んだ。最終的に1番はスーッと流れて最後まで溜めて放出するイメージをシェアした。

 

ソロのような余白もあったので、そこは最初のテイクではかなり好き勝手にさせてもらって、最終的には9thを使った印象的な駆け上がるフレーズをソロの折り返し手前に、最後にはペンタトニックの下るフレーズを入れるあたりで落ち着いた。あまりピアノが饒舌になり過ぎないように留意しつつ。

 

「ピアノと二人で向き合って演奏する、殺陣のような緊張感」みたいなイメージでは無く、あくまで「ピアノ伴奏による歌モノとして成り立つコンテンツ」というイメージで作った。ピアノが目立ち過ぎることなく、ボーカルと歌詞を引き立てるような構成をした。

 

 

 


 

 

…と、だいたいこんな感じ。

文字にするとひどく難解に感じるかもしれないけども、実際はほぼ直感的に作ってて。

案件を受けてから完成までの速度を上げていくのが今の命題で、それによって手広く多くの案件を受ける事が出来る。同じ時間で多くの案件を捌ける方が良いでしょ。

もちろん、前提としてある程度以上のクオリティが必要となる。僕はそこのボーダーを超えたと感じたので、今は速度を重視しています。

 

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