いかがお過ごしでしょうか。生きてる?息してる?
気が滅入るニュースが多いけども、生きてればなんとかなる。きっと。
さて、今回はまたまたこらた氏から届いた曲をアレンジした話。
前回の記事はこちらから。
この案件はこれで終わりだった。
ピアノでアレンジをし、パッケージ。これで依頼主も首を縦に振り、完遂。
でも、せっかくだからこの素材を使ってアレンジを作ってみようと思い立ち。良い練習になるしね。
というわけで制作してみた。これは案件としてではなく、完全に趣味として作ったものとなる。
よって、事前のこらた氏の要望等はもちろん何も無く、本当に好き勝手させていただいた結果だ。
アレンジに際して、こらた氏のバンド「just kidding」と逆を行くようなアレンジにしようと決めた。
just kiddingはバンドの形態を取る。ギター、ベース、ドラムが居る。なのでこれに逆行し、「その3種の楽器をどれも使わない」という縛りで進めていく事に。
曲の盛り上がりとしては、ピアノアレンジの時と同様に終盤に持っていく事に。
バンド楽器を使わない縛りを設けたので、ドラムはループを使う。そして終盤から登場させることで分かりやすい盛り上がりを作る。
ビートのループがだんだん曲に馴染み、耳にも馴染んできたところで、アウト路で一瞬ブレイク――つまり無音を作る。これにより場面転換をしっかりとさせて意外性を作る。ちょうどアウトロの「Say Hello.」のとこね。
ベース音はシンセベースを使用し、1番サビから登場。意外と前半の方から忍ばせてあるのだ。
ピアノの音を低音域を補強するくらいの意味合いで仕込んであり、最初から最後まで表立って目立つことはない。
イントロにはピアノの後ろにエフェクティブな音を。ちょっと霧が掛かった世界をイメージ。もしくは水の音としても良い。思考の余白を持たせた音作りをした。
他にも一度や二度しか鳴らない音が散りばめてあったり、エアリーな音を使ってたりと、情景を詰め込んだ。アトモスフィア系と僕は呼んでいる。界隈によっては多分通じる。
対してビートのループにはインダストリアルなサウンドを使用。
いわゆる無機質なサウンドってやつで、その名の通り工業的――工場で出しているような打撃音というとイメージしてもらいやすいかも。金属を使ったような音やスチーミーな音を中心とした組み合わせだ。
低音をやや強調しつつもうるさくなりすぎないように留意。あくまで曲の流れを誘導する役割に留めた。
そう、どんなにアレンジを進めようが、歌モノの主役は歌。
歌より目立つアレンジほど陳腐で独りよがりで自己満足的なものは無い。ラーメンの上のトッピングがラーメンより目立ったとしたら、それはラーメンではなのである。
というわけで、こらた氏が手打ちした麺――じゃなかった、持ってきた曲に僕なりのアレンジを手掛ける。
なお、ピアノをフレーズは一番最後の部分を除いては同じトラックを使っている。
声もやや手を加えさせてもらい、ハモリを追加。
基本的には上3度と下3度なんだけど、オートで掛けるハモリって気持ち悪くて好きじゃないので、一つずつ耳でチェック。
パーフェクトなピッチからほんのりずらした方が響きが良くなったりもする。だって元のピッチにも微妙な揺らぎがあるわけだし、考えてみればそりゃそう。
これは完全に耳が頼りになる作業だ。
そんなハモリは場所によって上のハモリだったり下のハモリだったり。もしくは両方だったり。と、色々と使い分け。
あとはもうひとトラック複製して、こちらはラジオボイスのような加工を。Aメロやサビ、その他色々な場所でエコーのように使った。
…とこんな感じで好き勝手やらせてもらいまして、こらた氏に投げつけたわけです。
そしたら甚く気に入ってくださり、採用されたという次第。
これをどう使うかは依頼主であるこらた氏へ任せる事に。
僕主導で何らかの場所にアップする選択肢もあるように見えるけど、それを僕がしてしまうとどうにもイヤらしい。
それぞれの志向やクオリティは置いといて、納品したシンプルなバージョンよりもこちらのミックスの方が派手なのは確か。それを依頼主の意志を受けずにこちらでアップするのは僕自身の何かに反する気がした。
よって、「好きにしてください」と投げた。
そしたら「発表したい」との事だったので、こらた氏サイドから上げてもらう方向で進んだ。
しかし、かなり喜んでいただけたようでアレンジャー冥利に尽きますね。これほどしっかりと相手のニーズに沿えたときの嬉しさはひとしお。
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