ラーメン福へと行ってきた。
恐ろしく久しぶり…というか味の記憶すら残っていないレベルの昔に行ったきりなので、もう「もやしがいっぱい」とか「壁にメニューがあった」とかそういう記憶しかない。
ラーメン福とは
ラーメン福は愛知県内にのみ存在するチェーン店。名古屋市内は南区や港区など、なんとなーく南側に多いイメージ。市内中心部には無い。
創業は公式サイトによると昭和53年。つまり西暦1978年だ。
味は一種類のみ。
だいたいにもラーメン屋さんで味噌だの豚骨だの醤油だのと手広く用意するのは難しい。何種類もの味を店舗内で仕込むのは不可能で、セントラルキッチンでまとめて作るようなスタイルになる。
つまり、味が絞られている方が反比例的に一つの味に手間暇をかける事が出来る。絶対的な指標とまではいかないが、広範な味を用意するお店はより大衆向けで、狭めた味のみを提供するお店はより味にこだわる人向けであると言える。
これはいわば動物や植物の進化とも似ている。環境や宿敵、生活や食などによって独自の進化を遂げていく。あるものはツノを持ち陸で生活をし、あるものは空を飛び蜜を集める。
それのどれが正解か、という事ではない。まず正解をどこに定めるかでもガラリと変わってしまう。
そんな中で、味を一種類のみに絞って勝負をする――。つまりその味が食べたい人のみが来店する。塩味が食べたい人や味噌味が食べたい人は来ない。
最初から照準を絞った手法には男気のようなものを感じる。同じく味を絞ったチェーン店ならば東海地方には「うま屋」がある。
特徴
ラーメン福には、他のラーメン屋さんではあまり見られないようないくつかの特徴がある。
もやしがすごい
もやしがとにかくすごい。
今でこそ二郎系ラーメンが台頭してきているので、この量のもやしを見てもそこまでインパクトがあるようには思えないかもしれない。それでも山のように盛り付けられたもやしは圧巻。
オーダーはメモしない
これも大きな特徴。ラーメンの味は1種類だが、大盛や特製等の差がある。さらに「もやし多め」「麺少なめ」「麺固め」等のカスタマイズも出来る。
それらを直接カウンター越しに店員へと伝えるのだが、店員は忙しい時でも基本的に全オーダーを暗記。そして無駄のない動きでオーダーを捌いていく。
食べてみる
カウンター席しかない店内では、店員の仕事を見る事ができる。
その一挙手一投足を全て見る事ができるのだが、店員もきっと見られるのには慣れているのだろう。
ほどなくして到着した、過去のわずかな記憶に残るそれと合致したラーメン。
そういえば昔はこのもやしが好きじゃなかった。麺が食べたい子供にとって、これだけのもやしは邪魔でしかない。味もしないしね。
というわけで、まずは「天地返し」から始まる。
麺の上の大量のもやし。これはそのまま食べても味がしない。かと言ってもやしを地道に食べていると麺は伸び切ってしまう。
そこで、まず最初に「天地返し」なる動作を行う。レンゲで支点を作り、箸を使ってもやしと麺をぐるりと半回転させる。
これによりもやしをスープに沈めて味を染み込ませ、さらに麺を上に引き上げることで麺自体を伸びにくくもできる。
上手く出来ないとびちゃびちゃになってしまうので、どうしても天地返しが苦手な方はあらかじめ「もやし少なめ」でオーダーすると良い。
あとは思うままに食べるのみ。
そういえばこんな味だったなぁ、と食べながら少しずつ記憶を突かれるような感じ。
背脂醤油のラーメンだが、決してくどくない。
卓上調味料には胡椒、特製唐辛子、ラーメンだれ、餃子のたれ。基本的には胡椒と特製唐辛子で味を変えていく事になる。尤も、飽きが来ないような絶妙な味わいで仕上げられているので、そこまで卓上調味料は必須ではない。
愛されるチェーン店
ランチどきはもちろんのこと、夕方や遅めの時間にもそれなりに来店はある。
だいたいの人が席に着くなりオーダーをし、立ち上がって水を取りに行く…。ここまでのルーティンが完成している方が多い。つまり常連の人が多い。
創業何十年も経つような飲食店でも来年にはどうなるか分からないこのご時勢。ラーメン福はややローカルな立地にあることで、地元の方々からのラブコールが大きそうな印象を受けた。
10年経っても同じ場所に存在し続け、同じように愛され続ける。
10年というのは人生で考えれば結構大きな期間であると言える。
ラーメン福がそれだけ長く続き、愛される理由が分かったような気がした。