ビール、ワイン、ウイスキー…世界には様々なお酒が存在する。
日本にも日本酒や焼酎という独自のお酒が存在するように、所が変われば酒も変わるのである。
リモンチェッロというお酒
南イタリアにはリモンチェッロ(Limoncello)というお酒がある。
南部の都市ナポリからナポリ湾を渡ったところにある島、カプリ島(Isola di Capri)が発祥と云われるリモンチェッロは、レモンを用いたちょっと度数高めのリキュール。
南イタリアと言えばレモン。日本ではレモンはシチリアだけのイメージだが、イタリア南部では全体的にレモンが生活に根付いているほど身近な果物。
シャーベットにしたり、料理やお菓子に使ったり、シロップにしたりと用途は多岐。これだけ多様な使われ方をしていたらお酒に使われるのも自然な流れである。
製法
レモンの皮を用いる。果実部分は使わない。
酒に漬け込むため、レモンは無農薬・薬剤不使用のものが望ましい。
レモンの皮のうち、黄色い部分のみを用いる。ちょっと内側の白い部分には苦みがあるため、用いないことが多い。
使用する酒は蒸留酒。クセがなく度数が強く、かつ混ぜ物が無いことが望ましい。
例えばウォッカ。中でも純度の高いスピリタスを用いることも多い。
レモン6個分程度の果皮に対して蒸留酒1リットルの目安。
削った果皮と酒を1週間程度漬け込み、漉すことで原液が出来上がる。
しかしこのままでは度数が90%くらいあり、およそ常飲には向かない。酸っぱい強アルコールである。
グラニュー糖と水を加熱してシロップを作り、これと合わせることで飲みやすさと度数の調整を行う。
市販品は30%~40%の度数まで下げられる。
リモンチェッロと生活
リモンチェッロは家庭で作ったりもする。
さながら日本で言うところの梅酒ポジションである。そうそう、梅酒と同じく漬け込み用のお酒にホワイトリカーを使うこともあるらしい。
レモンの果実は料理などに使い、余った果皮はお酒に漬け込んでおくかね、くらいの感じで作る。
というか果汁のみを抽出することの多い日本と違って、レモンを丸ごと使うし何なら葉も使う。それだけ生活に密着しているのだ。そもそもシチリア系のレモンは日本のレモンよりも酸味がマイルドでフルーティーであるからにして、色々と応用しやすいという側面もある。
梅酒とリモンチェッロの製法の違いは最初から砂糖をぶち込んでおくか、後からミックスするかというところ。
これらは浸透圧等の科学的な面から見ても、非常に理に適っている。梅酒は氷砂糖が徐々に溶けだす事で、梅の実からうまいことエキスを取り出せる。その代わり、時間がそれなりに掛かる。リモンチェッロは皮を使いスピーディーにお酒とする。
それぞれ生活の知恵ってやつだ。素晴らしい。
イタリアのレモンの収穫シーズンは10月から。
リモンチェッロは度数が高いため、体を暖める役割もあったそうな。
そうなるとサッサとお酒にしたい気持ちも分かる。梅酒みたいに2~3ヶ月も待ってられない。
作成したリモンチェッロは良く冷やして、少量をストレートで。
ただし度数がやや高いので、ソーダ割りにしたりコーラやジンジャーエールで割ったりカクテルに加えたりもする。
例えばジントニックやモスコミュールの隠し味にリモンチェッロを入れるのもおいしいし、スパークリングワインとリモンチェッロを割るレシピもある。
なお、リモンチェッロをストレートでいただく場合、よく食後酒として供される。
程よいレモンの酸味が食後のリフレッシュに良いのだとか。甘味も適度にあるので、軽いデザート替わりにもなるのかもしれない。
買ってみる
近所の酒屋に行ったらたまたま目に入ったリモンチェッロ。
名前だけは聞いたことのあるお酒だったが、飲んだことは無かったので購入。
酒屋で見かけたのはこちら。
「カザル・デミリア(Casal D'Emilia)」のリモンチェッロ。
色々な種類のリモンチェッロがあるが、概ね1,000円~3,000円の価格帯。
色々なリモンチェッロを検索していて見つけたのだけど、国産の「道後リモンチェッロ」というものがあるらしい。
愛媛県の酒造メーカー「水口酒造株式会社」の手掛けるもので、漬け込みには愛媛県産焼酎を使用。うーん、和っぽい。
レモンや砂糖代わりのはちみつも愛媛のものを使用していて、強いこだわりを感じる。
これはまた別の機会に。
カザル・デミリアのリモンチェッロは2,000円以内で購入できる。
度数が強いので、他のお酒のようにゴクゴクと無くなっていくことが無い。その点ではコスパは非常に良いのかもしれない。
ボトル表面には、
LIMONCELLO(リモンチェッロ)
CASAL D'EMILIA(カザル・デミリア)TRADICIONALLE(伝統的な)
LIQUORE DI LIMONI(レモンのお酒)
イタリア語はなんとなーく英語っぽい単語も多いので、この辺ならば意味は推測できそうだ。
なお、その下の
CON LIMONI DELLA COSTA ITALIANA
は、直訳すると「イタリア海岸のレモンとともに」。
CONが英語のwithみたいなものなので、イタリア海岸のレモンを使ってますよ的なニュアンスとなる。
なお、ボトルネック部分には
PRODOTTO TIPICO(代表的な製品)
と書かれている。
度数は30度。
説明にも「冷凍庫でグラスとともによく冷やし、食後酒としてストレートで」と書いてある。
なお、度数がそれなりにあるので冷凍庫へ入れても凍ることはない。
飲んでみる
グラスに注ぐと綺麗なイエロー。しかし着色料は使っていないそう。
お酒にレモンを漬け込んで作ると、やがてレモンの皮は脱色して白くなる。黄色の色素はお酒に溶け出すのだ。
飲むと、強いアルコール独特のカーっと熱くなるような感覚がある。
ウォッカやアブサンをそのまま飲んだ時と同じアレだ。お酒をあまり飲まない人は苦手な感覚かもしれない。
レモンの香りが華やかに香る。果肉を使っていないのでジューシー感は無いが、間違いなくレモンだ。心地良い味わい。
例えるなら、レモンキャンディをそのままお酒にしたような味。
キュッと一回で飲み切れるくらいの量を、食後に頂くのがベスト。
チビチビと料理とともにやるのも合わなくはないが、ワイン等のようにそこまで引き立たせ合うようなお酒ではない。
あくまで独立、完結したお酒のため、ツマミや料理は不要。単体で充分楽しめる。
この度数が苦手な人は炭酸で割ると良い。
いわゆるレモンサワーになるわけだが、昨今のリアル系レモンサワーを飲みなれていると物足りないのかも。果肉が入っていないので、レモンを丸かじりしているようなジューシー感は無い。
割るならば、個人的にはコーラがオススメ。
邪道かもしれないが、コーラにレモンの味わいがプラスされて良い。
まとめ
食文化・生活とお酒には密接な関わりがある。
特産であるレモンを使用したリモンチェッロは、バジルを使用した料理や海の幸との親和性が高い。また、オリーブオイルをふんだんに使った油っこい料理の後に飲むのに適している。
世界にはまだまだ興味深いお酒はたくさん存在する。
普段のお酒以外にも、色々と手を伸ばしてみるのもまた一興。まだ見ぬお酒は好奇心を呼び起こしてくれるだろう。