「固めプリン」というものが流行っている。
読んで字のごとく、比較的固めに作られたプリンのこと。
なお、「かため」の漢字表記には「固め」「硬め」「堅め」と使い分けがあり、個人的には硬質チーズ等と同じく「硬め」を使いたいのだけど、本記事では一般的である「固め」で統一する。
「固め」は「柔らかめ/固め」のように、「形容詞+め」と活用して比較としての意味を為す。いわゆる接尾辞としての性質がある。
が、例えば「4の字固め」のように「●●固め」という名詞としても多用されているため、唐突に文中に「固め」の文字だけが出てくると幾分かテンポ感が乱れるきらいがある。
しかしながら、やはり「固め」が一般的であるからにして、ここでは「固め」で表記を統一する。
あと、このブログ記事内で「固め」を名詞かどうかを悩ませるような使用法が無いだろうなという理由もある。
固めプリンの盛衰
さて、国語嫌いには呪文のようでしかなかった枕はこの辺にして、本題へ入る。
固めのプリンという存在は、何も新たに開発された食品ではない。昔からあるものだ。
最近流行している、というだけである。タピオカだってバスクチーズケーキだって、昔からあるものがたまたま今ブームになっただけ。
固めプリンは、イタリアンプリンと呼ばれていたりミラノプリンと呼ばれていたり。
どうも決め手となる文献は見つからなかったけど、イタリアのプリンは固め、という認識はありそうだ。少なくとも日本国内では。(本当は海外の視点の文献が欲しいところ…。)
庶民と学生とバンドマンの味方、サイゼリヤ御大に於いても「イタリアンプリン」は取り扱っている。こちらももちろん固めの質感だ。
確認できる範囲では、既に1990年代にはプリンを取り扱っているようだ。
昔ながらの喫茶店――いわゆる純喫茶と呼ばれるレトロ感のある喫茶店でも固めのプリンが供される。そう、純喫茶界ではあの固めのプリンはレトロ感があるプリン、昔ながらのプリンと呼ばれる。つまりそれは昔から存在していた証明たりうる。1970年代創業のお店も見つけたが、古い所だともっと古い。
純喫茶と言えば、プリン・ア・ラ・モード*1のブームも欠かせない。休日はデパートへ行き、フルーツパーラーや喫茶店でこうしたデザートをいただく…という家族も当時は多かったはず。サザエさん的な時代。
固めプリンからややズレるけども、あのグリコのプッチンプリンが生まれたのも1970年頃だという。
この頃は家庭でもプリンは作られ、パーラーや喫茶店でもプリンが売れていた事を受けて、それらの需要を見込んでプッチンプリンの開発が始まったという。つまり、この頃はプリンがブームだったのだ。
これらの事より、戦後よりプリンが純喫茶やパーラーを中心に浸透し、さらに1970年頃にブームになったと考えられる。今現存している純喫茶にその頃の創業が多いのも、ブームによるものだと考える事が出来る。
固めプリンと"今"
現代に於いては、プリンの他にも様々なスイーツが存在する。
固めプリンも根強い愛好者は居ただろうが、ナタデココやティラミス、パンナコッタ、タピオカ、バスクチーズケーキ、と様々なブームの傍らで影を潜めていた。
そして。満を持して固めプリンに再びスポットライトが当たったのだ。
同時に純喫茶も再注目されたし、この自粛期間を活かして自宅で固めプリンを作った人もいるのではなかろうか。
そのブームをキャッチした各コンビニがプリンを新発売&改良。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートとそれぞれの特色が盛り込まれたプリン。それぞれを食べ比べてみた。
セブンイレブン「イタリアンプリン」
まずはセブンイレブンから。何を隠そう、僕はコンビニの中でセブンイレブンが一番好きだ。何を隠そうとは言ったが全く隠す気など無かった。
というのも、これを先に言っておかないと「贔屓目」が出てしまう恐れがある。平等などというものはこの世界には存在しないのだ。うーん、センシティブ。
セブンイレブンのスイーツコーナーに結構な数が群れを成している。「大丈夫…?そんなに売れる…?」と不安になるくらいの数が生息している時もある。
開けてみると、片側は丸みを帯びているが片側は断面となっている。1つのプリンを中央で割ったものをパッケージしているのだろう。
やはりカラメルが上にあった方が見栄えは良いよね。1色の見た目よりも色彩のコントラストがあった方が視覚的に良い。
カラメルはそのままだともちろん垂れてしまうので、ゼラチン等を入れて垂れにくく仕上げている。これは各社共通。
プリンの側面をスプーンでぺちぺち叩いてみても全然揺れてくれない。確かに固い。
スプーンを入れてみると、やや抵抗感がありながらもシャクっと切り取れる。
にしても白い。卵の黄身と白身の比率そのままでプリンを作ったらこの色にはならない。着色はしていなさそうなので、他に理由がありそうだ。
食べてみて分かった。
卵黄由来のコクや味わいはほぼ感じられないが、クリームチーズのようなねっとりとした質感と舌触りが感じられる。
卵の味わいというよりも乳製品の味わいの方がやんわり勝る。言うなれば牛乳プリン的かもしれない。
カラメルは弱めながら香りや苦さは自然。
甘さなども比較的控えめで、全体的にとてもナチュラルな印象。
ただ、いわゆる純喫茶系のプリンとは別物で。
ミラノ系のプリンには近い。ただし、味の濃い甘いプリンをお求めの時はちょっと肩透かしかもしれない。
ローソン「ブラボーミチプー」
ローソンでは略語系のスイーツ名称が主流になりつつある。ミッチリとかギッシリとかのオノマトペを用いた略語はリズム感も良く、覚えやすいかどうかはさておいて目と耳は惹き付ける。
こちらのブラボーミチプーはミチプーのプレミアムバージョン。
通常のミチプーよりも100円以上も高い。
このパッケージ、ゴディバの時も思ったけど開けるのに神経を使う。
かと言って蓋が緩いとそれはそれで問題になるし…とりあえず周囲のシールは全部取り去ってから開けたいところ。
片側だけしか剥がさずに開けると、そちらを支店にして蓋が弧を描いて開くことになる。くら寿司の回転レールの蓋みたいな挙動といえば伝わる…?で、この開け方をすると、蓋がスイーツをかすめてしまうのね。
なので、シールは全部取り去ってから、なるべく垂直に、上方向へ蓋を取り外す。無駄に一番神経使うところ。写真も撮りたいし。
あ、ちょっと脱線するけど、今回のプリンは持ち帰る際にもかなりびくびくしてました。もし崩れたら何とか修正する?それとも買い直し?まさかの写真ナシ?…等々を考えて、どれも嫌なのでとても気を使って持って帰りました。おかげで自粛期間中に鈍ってしまっていた平衡感覚を養えたような気になってます。
この外観からも伝わるブラボーな見た目。ちなみにブラボーはイタリア語。これもきっとイタリアンなプリンである事を暗喩しているのでしょう。たぶん。
確かにここでマーベラスだったらなんか違う。
スプーンを入れてみる。
セブンイレブンよりはやや柔らかいが、充分固めと言える。もっと胸を張って良いと思う。
それよりも、この断面。
これぞブラボーミチプーの特徴でもあるのだけど、味わいが多様。
一口目じゃ全容を把握できない。
一番下はスポンジ層。ちょっとしっとりしていてこれが他の層との食感違いとなって良い感じ。
下から二番目はコンポートのようなリンゴと洋ナシ。洋酒のような奥行き感もあるほろ苦いカラメル味のゼリーで包まれている。
肝心のプリンの部分もしっかり固め。スプーンでつついても揺れない。
やや卵感もあり、ミルク感もある。下2層のおかげもありつつも、重厚な味わいを覚えた。
甘さは適度。最上段のカラメルも零れないような絶妙な固さ。
ファミリーマート「ねっとりイタリアンプリン」
ファミマの一品。
「さらにおいしく~」と書いてあるので、きっと以前にも取り扱っていたのだろう。
蓋に「こぼれ注意」とあるように、カラメルは3社の中で一番緩い。
こちらのカラメルもおそらくゼラチンが使われているのだろう。
上のカラメルはプッチンプリンのカラメルのよう。
すくってみると、こちらももちろん固め。
そして印象的なのはバニラ感。バニラビーンズの黒い粒もプリンの中に散りばめられていて、香りもバニラがやや勝る。
甘みも他社に比べると強めで、その分カラメルはややビター。
卵由来の固さを感じる事の出来るプリンは、いわゆる純喫茶の物に近い。コンビニ3社の中で一番純喫茶っぽい。
特にカラメルとプリンの間の部分がさらに固めに仕上がっていて、ここが何とも言えぬおいしさ。
ルックスは素朴ながらも、固めプリン欲はしっかりと満たしてくれる。
評価
味
セブン:★★★★☆
ローソン:★★★★★
ファミマ:★★★★★
ローソンは色々入ってるし、価格も頭一つ分飛び出ているのでもちろん比例して評価も良くなるのは然るべき。
セブンイレブンとファミマは好みの差。卵感を求めるならファミマ。素朴な味わいを求めるならばセブン。
量やコスパ
セブン:★★★☆☆
ローソン:★★★★☆
ファミマ:★★★★☆
どれも量が少なめであり、他のスイーツや同価格帯の商品と比べるとコスパの面では良くはない。
セブンは税込248円。ローソンは税込380円。ファミマは税込213円。
ローソンはプリンとしてではなくパフェやパティスリーで買う感覚で考えればお得なのかも。
食感
セブン:★★☆☆☆
ローソン:★★★☆☆
ファミマ:★★★★☆
僕の中ではどうしてもゼラチンを入れたプリンは邪道なのだけど、コンビニで取り扱う上でゼラチンは必須なのかもしれない。カラメルだけでなくプリン本体にもゼラチンを使う事で固さの演出は容易になる。
ただ、そういう混ぜ物は本来求めているプリンからは離れていってしまう。セブンイレブンは僕の求めていたプリン像からは離れていた。なんというかババロアに近かった。
一番ナチュラルな食感だったのはファミマ。
満足度
セブン:★★★☆☆
ローソン:★★★★★
ファミマ:★★★★☆
食べ終わった後の満足感が一番高いのはローソン。さすがブラボー。ただし値段もブラボーなので、お財布と要相談。
何を求めるかによっても評価は変わりそう。純喫茶系の味わいならファミマ、ミラノ風のプリンを食べるならばセブン、そしてパーッと贅沢するならローソン、と言った感じ。
色々と食べ比べて自分好みのプリンを探してみては。
まとめ
居酒屋でデザートに迷ったときはプリン系(カタラーナ、ブリュレとか)を選ぶとハズレが少ない気がする。
*1:プリンを中心とし、フルーツやシロップ、クリームやアイスとともに盛り付けたデザート