ここ数年、ヨーロッパを中心としたご当地スイーツがじわじわバズったりする傾向を感じている。
バスク風チーズケーキから始まり、コンビニを中心にどんどん耳慣れないスイーツが仕掛けられていった。
バスクチーズケーキはスペインのバスク地方のチーズケーキ。
最近流行っているマリトッツォは語感の通りイタリア・ローマの伝統的なお菓子である。
少し前にじわっと流行ったカヌレ。こちらもフランスの歴史のあるお菓子である。
昨今のデジタル社会ではマニアックな地方の料理も簡単に調べて知ることが出来る。
日本で急にシュクメルリにスポットライトが当たったりね。だってジョージア料理だよ?ジョージアってどこ?
そんな中で、日が当たりそうで当たらないチョコレートがある。
それがモディカチョコレートだ。
モディカ?
モディカ(Modica)はイタリア・シチリア島南部にある町である。
より発音を現地っぽくするならば「モーディカ」となる。
雑に例えるならば、シチリアは日本で言う九州地方みたいなものなので、モディカはさながら長崎県島原市みたいなものだと思ってもらえれば良いと思う。伝わる人にしか伝わらん。
モディカはなだらかな丘に沿って街が形成され、美しい街並みとなっている。
写真を検索すると斜面に所狭しと立ち並ぶ住宅と合間を縫うような階段や坂だらけの「いかにも」な風景がたくさん出てくる。ちなみにこのいかにもな街並みはモディカの上の街(Modica Alta)と呼ばれる地域。住宅地が立ち並び、階段や坂が多い。
丘陵のふもとには道路が整備され、様々な商店が並ぶ。交通量も多く栄えているこちらは下の街(Modica Bassa)と呼ばれている。モディカチョコレートのお店が立ち並ぶのはこちらのエリアである。
つまり、通行用道路や銀行・ホテル・ショッピングモールなどの街の中枢は下の街、住宅は上の街、という住み分けが出来ているのだ。
モディカチョコレート
そんなのどかなモディカが発祥と云われるのが、モディカチョコレート。
イタリア三大チョコレートのひとつに数えられるモディカチョコレートは古い時代からの製法によるチョコレートで、現代の製法とはやや異なる。
テンパリングをしない
大きな特徴として、テンパリングを行わない――つまり加熱⇒冷却の工程を踏まない、という点がある。
とはいえ全く加熱をしないわけではなく、お風呂のお湯くらいの温度で加工を行う。これにより、砂糖が完全に溶け切らずに食感が残る。この食感がモディカチョコレートらしさとなっている。
トロトロではなくデロっとした状態のペーストを型に流し込み、空気を抜く。
型を大きめの容器にいくつか並べ、その容器ごと叩きつけるようにして空気を抜く。これが伝統的な製法である。
この時の力加減などは勘と経験。この振動により空気が抜け、カカオの油分が表面へ移動する事によってツヤも出る。
あとは冷やして固めれば完成だ。
原材料はシンプル
更に、伝統的なモディカチョコレートでは乳成分を使用しない。
牛乳は入れないし、もちろんバターや乳脂肪も不使用。基本はカカオと砂糖だけ、である。
代わりに様々なフレーバーを付ける場合もある。フルーツやスパイスなど多岐に渡り、唐辛子や野菜を使ったものも現地では珍しくない。
これをエスプレッソとともに頂くのがシチリア流。
なお、完成したモディカチョコレートは歯が弱い人ならば歯の方が負けそうなほどの固さ。皿の上で一口サイズに手でパキッと割ってから頂く。
割ったときには欠片が多く出る。その時の欠片はエスプレッソに入れて飲むのも良い。
今回のお取り寄せ品
チョッカルーア モディカチョコレート
モディカチョコレートは輸入食品店でたまに見かけるが、まだまだ入手は容易では無い。
また、国内でのモディカチョコレートの知名度のせいもあり、普通のチョコレートのつもりで買ってしまう人もいるだろう。
しかし、最近ではネットショップでも購入出来るところがちらほら。詳しい人ならば知っている、というポジションになってきたように思う。
カカオニブあたりのスーパーフードに興味のある人なら、掘り下げていくとこのモディカチョコレートに辿り着く事もあるかもしれない。
お取り寄せしてみる
今回はチョカッルーアというメーカーのモディカチョコレートを購入。
モディカチョコレートは原材料がシンプルなせいか、いろいろなフレーバーがある。
バニラやレモン、オレンジは当たり前。唐辛子やサボテンなんかの変わり種も。
目移りしてしまうが、シンプルな「カカオ70%」を選択。
この「カカオ70%」、原材料はカカオマスと砂糖のみ。
これ以上無いほどのシンプルさだ。
箱を開けると、アルミ箔に包まれたチョコレートがお目見え。
なんて無骨で飾り気の無い板チョコレート。
昨今のバレンタイン催事場に並ぶ艶やかでカラフルなチョコレート達とは完全に一線を画す。
良い色。ツヤもある。
不純物のない、まさに"カカオ70%"の色である。
食べてみる
前述の通り、モディカチョコレートはこのままバキッとかじるようなものではない。
試しに勢いよく食べてみるのも良いだろう。その数秒後には後悔することになる。
そう、モディカチョコレートは普通のチョコレートに比べて固いため、予め手で折る事を推奨する。
両手でグイっと折らなければならない程だ。
割るときには特にコツは無いが、飛び散らないように。もしくは飛び散っても問題無い環境で。
チョコを割ると細かな粉がたくさん出る。これをコーヒーに入れると二度おいしい、という楽しみ方が出来る。
断面はこんな感じ。
断面を見てみると、通常のチョコレートのような滑らかさは無い。
砂糖の粒が残り、見るからにジャリジャリしている。
これこそがモディカチョコレートの特徴である。
食べてみると見た目通りの食感。砂糖の粒感が感じられ、奥深いチョコレートの味が楽しめる。
逆に舐めて溶かしてみようとしたが、うまく溶けてくれない。手ごろなサイズに折ったら、あとはガリガリと食べていこう。
モディカチョコレートはヘルシーフード?
一部の界隈ではカカオの持つイメージとモディカチョコレートの作成工程のシンプルさからヘルシーフードとして扱われ、あたかも低カロリーであるかのような誤解を生んでいる。
しかし、例えばカカオ70%のこのフレーバーならば単純計算で残り30%は砂糖なのだ。カロリーは100gで500kcalを越し、あまり低カロリーとは言えない。
シンプルながらも食感が楽しいモディカチョコレート。
そして、シンプルな故にチョコレートらしさも存分に味わうことが出来る。
余計な物が入っていないチョコレートを楽しむことで、また少しチョコレートの魅力を深く感じる事が出来るだろう。
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