ねこらぼ( 'ω')

名古屋でこそこそと活動っぽいことをしている橋本ねこのブログ( 'ω')

【気になるコトバ】今日から施行、「改正道路交通法」とは

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煽り運転による被害が多い昨今。

2020年6月30日、つまり今日から「改正道路交通法」が施行*1される。

 

ドライバーなら荒々しい運転をする車を見かけたことがあるはず。

また、運転中に他のドライバーの運転にイライラしたりすることだってあるかもしれない。そして基本的にその怒りはやり場が無い。

 

内閣府*2によると、日本全国の運転免許保有者は8,215万人。16歳以上の人口のうち、免許の保有率は74.8%*3となっている。

それだけの人が運転しているんだもの、本当に様々な考え方の人がいる。もちろん中にはヤバい奴だっているだろう。

 

煽り運転についての事例とともに、「いままで」と「これから」を比べてみたい。

 

 

"煽り運転"によるトラブルの増加

3年前。2017年6月に神奈川県で起きた東名高速道路での悪質な煽り運転は、全国のニュースで連日大きく特集された。

搔い摘んで話すと、被害者の男性からパーキングエリアでの駐車位置を注意された加害者が逆上、その後執拗に被害者の車を追い掛けた後に追越車線へ停車させたところ、被害者の車は後ろから来た大型トラックに追突された――という事件。

なお、追越車線を走る車の速度を100km/hとすると、その衝撃はビルの14階から落下したときと同等だ。

 

去年、2019年8月に常磐自動車道でも煽り運転が起こった。

最終的には加害者が進路を妨害するように停車することにより被害者の車を無理やり停めさせ、その後降りてきた加害者が被害者を殴りつけた。

何度も繰り返しテレビで流れたドライブレコーダーの映像はインパクトが強く、尚も記憶に新しく感じている人も多いのではないだろうか。

 

他にも全国各地で煽り運転は見受けられるが、特にこの2つの事件が全国的に大きく取り上げられて話題となったように感じている。

 

 

煽り運転はこの数年で急激に増えたわけでない。

むしろ数自体は減ってきていると考える。煽り運転という迷惑行為として広く知られるようになったことと、ドライブレコーダーが普及しだしたことが関係している。

 

ドライブレコーダーの普及

ドライブレコーダーの普及率は2017年では15.3%。

煽り運転についての不安感と認知度が高まった翌年(2018年)には一気に約2倍となる31.7%の普及率となった。

なお、現在の所持率は46%程度だという。半数近くが所持している事になる。

 

件の証拠としてもドライブレコーダーは重要な要素であり、それらのニュースを目にしたことにより必要性を感じた人は多いだろう。

 

今までの罰則

もちろん今までも煽り運転に罰則が無かったわけではない。

しかし、これまでの道路交通法には「煽り運転そのものを理由として取り締まる規定」が無かったのだ。

道路交通法に当てはめるとすると「急ブレーキ禁止違反」や「車間距離不保持」なんかが適用される。もしくは刑法から「暴行罪」「傷害罪」「強要罪」あたりを適用していた。

 

冒頭で挙げた事件を含み、今までに起こった事件やトラブルはそれぞれ道路交通法と刑法の範囲での適用となった。

 

2017年の事件は自動車運転死傷行為処罰法という法律違反での刑事訴訟。

こちらの法律には第2条・第3条に危険運転致死傷罪*4、第5条には過失運転致死傷罪の記述があり、これに該当するかどうかが論点となっている。

 

2019年の事件は傷害罪*5で逮捕したのち、強要罪*6で再逮捕されている。

実際に被害者を殴ったことによる傷害罪、そして停車させたりした件に関して強要罪の適用となった。

なお、煽り運転による強要罪での立件は全国初らしい。

 

 

さて、これらの事件を受け、煽り運転の取り締まりを厳しくする気運が高まった。

というわけで今回の改正道路交通法である。

 

改正道路交通法について

施行は今日から

今日から施行。施行を噛み砕けば実施。

今日から効力を発揮するという事だ。

 

よって、今日よりも前に起こった事件に関しては適用対象外となる。

これは事件の後に法律を変える事を防ぐ側面もある。それがまかり通ると色々と不具合がある。事件後に該当する刑罰を重くしたり軽くする事が出来てしまうと問題だしね。

なので、2017年の煽り運転は危険運転致死傷か過失運転致死傷かの論点だし、2019年の煽り運転は傷害・強要の罪である。

 

改正されて何が変わるのか

道路交通法の改正によって、「妨害運転罪」が創設された。

妨害運転はいわゆる煽り運転の事。

 

大きく2種類の運転が妨害運転として定義された。

  • 「他の車を妨害する目的での行動」――つまり、煽り運転をした場合
  • 「妨害運転によって他の車や道路等に著しく交通の危険が生じさせる行動」――つまり、煽り運転のせいで危険が生じた場合

即刻免許取消しの罰則もあり、重い処分が科せられる。

 

妨害運転の定義化

ともあれ、まずは何が妨害運転に当たるのかを文章化せねばならない。

定められたのはそれぞれ道路交通法に記載の有った10種類(10類型)の違反。妨害運転罪となった場合、これらの違反に合致するかどうかが問題となる。

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通行区分違反

右折専用レーンを直進、直進専用レーンから右左折等のほか、逆走、歩道や安全地帯などの走行。

妨害運転罪の例としては、イレギュラーな進行をした場合に適用される。

急ブレーキ禁止違反

不必要な急ブレーキの使用(本来やむを得ない場合を除き急ブレーキを掛けてはいけない)。

妨害運転罪の例としては、急なブレーキにより後続車への妨害をした場合に適用される。

車間距離不保持

いわゆる一般的に最も想像されるであろう煽り運転のケース。状況によって異なるので具体的な距離や時間は定められていない。

妨害運転罪の例としては、後ろから車間距離を詰めてくるような運転をした場合に適用される。

進路変更禁止違反

進路変更をするとき、後方から進行する車両の速度や方向を急に変更させる恐れがある場合の進路変更は禁止・違反となる。

妨害運転の例としては、割り込み・危険を感じるような無理な車線変更が当たる。

追越しの方法違反

基本的には右側を通って追越しを行わなければならない。すぐに元のレーンに戻らない場合は「追い抜き」となり、追越しにはならない。

妨害運転の例としては、後ろから追い上げてきた車が自分を抜かしてまた元のレーンに戻った場合は「追越し」となり、左から抜かして元のレーンへ戻った場合は違反となる場合がある。

減光等義務違反

夜間は基本的にハイビームが原則だけど、自分の前に車が居たり対向車や歩行者がいる場合はロービームにしなければならない。

妨害運転の例としては、後ろからの不必要なパッシングやハイビームが該当する。

警音器使用制限違反

危険を防止する目的・法令の規定でクラクションを鳴らさなければならない場合以外でクラクションを使った場合、違反となる。

妨害運転の例としては、後ろからの不必要なクラクションの使用が該当する。

安全運転義務違反

脇見運転や安全速度違反(徐行や減速の違反)、ペダルの踏み間違い、ハンドル操作ミス、前方不注意なんかもこちらに該当。交通事故の中でもよくある違反となる。

妨害運転の例としては、無理な幅寄せや窓から身を乗り出してきたりエアガンで撃ったりするアレも該当する。

最低速度違反

高速道路で50km/h以下で走行したり、標識等で指定された道路で指定の最低速度を下回る速度で走行すると違反となる。低速すぎると逆に危ないような場所で定められる。もちろん合流時や渋滞時は除く。

妨害運転の例としては、悪意のある減速により後続車へ妨害をした場合に該当する。

高速自動車国道等駐停車違反

高速道路や高速自動車国道に於いては駐車・停車がともに違反となる。こちらも渋滞時は除く。

妨害運転の例としては、駐車・停車により後続車を妨害したり交通状況に影響を与えた場合に該当する。

 

罰則と行政処分

前項で挙げた10種の違反が妨害運転と認められた場合、罰則と行政処分がある。

妨害運転そのものは3年以下の懲役又は50万円以下の罰金の罰則、違反点数25点*7となり、即刻免許取り消し(2年間)となる。累積点や前歴があれば最大で5年の免許取り消しだ。

また、その妨害運転により著しい交通の危険が生じた場合はさらに重くなる。5年以下の懲役又は100万円以下の罰金の罰則、違反点数は35点でこちらも即免許取り消し(3年間)。前歴等によって最大10年の免許取り消しとなる。

 

…と、かなりの重罪。数年前の飲酒運転の厳罰化もそうだったけど、危険な運転に対する罰則が重くなるのは安全運転をする上でとてもありがたい。

 

もしも煽り運転の被害に遭ったら…?

基本的には冷静を保つこと。

売りコトバに買いコトバ…なんて事が無いように、冷静に。

 

とはいえ、実際に煽られると恐怖感も大きい。「自分はしないような運転をする人」=「何をするか分からない人」なのだ。そりゃ怖い。

そんな状況でなかなか冷静でいるのも難しいかもしれない。そういう場合は駐車場やパーキングエリア等へ移動して停車する。人目がある場所の方が望ましい。

停車したら110番通報をする。同乗者がいたら同乗者が通報しても良い。

 

もしも相手が追ってきたとしても車外に出ずにドアはロック。

脅したり挑発したり話しかけたりしてきても、警察が到着するまでは対話等をせず、車内で待機するように。

 

"煽り運転"だと思われないために

逆に加害者だと思われてしまう事もあるかもしれない。

こちらもやはり冷静に運転をする事が重要。疲れていたり焦っていたり考え事をしているとダメ。特に時間が無い時は前の車が遅くてイライラするかもしれないけども、それはもっと早く出発するか時間を作るかするしかない。

 

また、勘違いされやすい運転は避けなければいけない。

  • 急発進
  • 急停車
  • 急な割込み

等の勘違いされやすい運転は避ける。

 

予防や対策も講じる

とにかくドライブレコーダーは必須となる。

「ドライブレコーダーがある」というだけでも十分な抑止力になる。

そのうち自動ブレーキとかとともに各社標準装備にするんじゃないかと思ってる。

 

他にも、そもそも高速道路等で追越し車線を走り続けるのは違反なので、追越しをするとき以外は左のレーンにいる必要がある。それだけで後ろの車に追い付かれるシーンを減らす事が出来る。必要な時だけ右の車線へ。

また、一般道も含み、後ろの車に追い付かれたら早めに道を譲った方があらぬトラブルを回避できる。

 

まとめ

みんな安全に運転出来ればそれに越した事は無いのだけど、それもなかなか難しい。

焦って急いでいる人の他に「邪魔してやろう」とか憂さ晴らしのために危険な運転をする人もいる。なので、自衛も必要なのだ。

 

逆に、「そんなに急いじゃって…どうぞどうぞ」くらいの心の余裕が欲しい。

これは僕の発言じゃないけども、「高級車で煽ってくる人は、車に対して所有者の価値があっていないから心にゆとりが無い。つまり背伸びして買った車を見せびらかして威圧したいだけの人。」と言っていた人が居て、これを思い出す事でちょっと心が楽になるときがある。もし良ければ。

 

また、詳しい情報や最新の情報、正確な情報等は公的機関等のサイトにて各自確認されたい。

www.jtsa.or.jp

news.livedoor.com

 

*1:実際に効力を持つこと。

*2:2015年現在。内閣府と警察庁の資料によるもの。

*3:男性85.6%、女性64.8%

*4:ただし、停車中の事故だったためにこちらの適用は難しいとされる

*5:刑法204条。15年以下の懲役又は50万円以下の罰金。

*6:刑法223条。3年以下の懲役。

*7:違反点数25点で免許取り消し。これは酒酔い運転と同等となる。