ねこらぼ( 'ω')

名古屋でこそこそと活動っぽいことをしている橋本ねこのブログ( 'ω')

金木犀の香りと秋の訪れ


金木犀の香りが分からない。

どうやら秋になると香るらしい。なんか良い香りらしい。ってところまでは知っている。
金木犀が木であり、10月ごろが開花時期ということも一応知っているが、お目にかかれた事は無い。

 

この季節になると、だんだんと金木犀の話が出てくる。
金木犀の香りが好きだという人も多いようで、この香りを嗅ぐことで秋を感じる人も多いと言う。サンマみたいなもんかねぇ。違うか。

 

ドラッグストアでは、金木犀の香りの柔軟剤、金木犀の香りのルームフレグランス、金木犀の香りのカーフレグランス、金木犀の香りのボディクリーム、と色々と展開している。

金木犀を嗅ぐから秋を感じるのか。秋限定で金木犀の香りがリリースされることで季節の移ろいを感じるのか。

 

そんなことを考えながらドラッグストアをふらふらしていると、ニベアプレミアムボディミルクに「金木犀の香り」が出ているのを発見。試しに買ってみるに至った。

そういえば金木犀の""の字って動物のサイ(犀)の漢字と一緒なんだよね。あのツノのあるアレね。
キンモクセイの属するモクセイ属(木犀属)の樹皮がサイの足に似ている事が由来らしい。木のサイってことで。

 

ニベアのプレミアムボディミルク

商品はこんな感じ。
ニベア プレミアムボディミルク モイスチャー200g。

だいたい700円~800円くらいで買えるのかな?

 

ニベアのプレミアムボディミルクは名前の通りさらりと広がりやすい乳液のようなテクスチャーで、スムーズに全身に伸ばすことが出来る。

4種類の展開があり、

  • しっとりと艶やかに仕上がる「モイスチャー
  • 美白成分としてビタミンCを配合した「ホワイトニング
  • 消炎成分で粉吹き対策と乾燥予防ができる「リペア
  • コエンザイムQ10配合でハリを与える「エンリッチ

がある。気分やニーズによって選べる幅の広さも魅力。

なお、今回の金木犀の香りはこのシリーズのうちの「モイスチャー」となる。

 

たしかにクリームと言うよりもミルク、って感じのテクスチャー。

よく伸び、そこまで重くないのにちゃんと保護されている感がある。
モイスチャーなだけあって多少じっとりするので、すぐに服を着たりするとくっつくのが気になるかも。十分サラッとしている。

 

成分はこんな感じ。

保湿力の高さですっかりと有名になったアルガンオイルをはじめとしたつやオイル成分*1がつやを付与。
保湿成分として、プレミアムグロウライン成分*2ボタニカルクリア成分*3が入っている。

うるおい持続成分として、高保水型ヒアルロン酸を配合。

まぁ正直プレミアムグロウライン成分とボタニカルクリア成分の名称はよく分かんないけど、良さげな成分はたくさん入っている。

 

これが金木犀の香りか

手に出したときからふわっと香るフローラルな香り。
これが金木犀か。ふむ。いい香りだ。

いい香りなんだけど、どこかで嗅いだ記憶がある。

 

香りというのは記憶と密接に絡みつく。

忘れていた記憶であっても、とある香りを嗅ぐことで一気に記憶がよみがえることもある。

これをプルースト現象、もしくはプルースト効果と呼ぶ。

blog.neko-labo.work

 

どこで嗅いだっけ…なんか思い出しそうで…と考えた結果、一つの場所が思い当たった。

そう、トイレである。

あ、これ、トイレだ。トイレの香りだ。

バラの香りとか石鹸の香りとかと一緒で、そういうトイレで嗅いだことがあるやつだ。

 

かといって全く的外れでもなく、前述のように秋になると金木犀の香りの製品が色々リリースされ、その中にはトイレ用芳香剤・トイレ用消臭剤もある。

また、昔の日本でまだ水洗トイレが主流では無かった時代、金木犀の強い香りで消臭(消すというより、強い香り同士でぶつけ合うだけだが)するためにトイレの近くに金木犀を植えることが多かったと云う。

それゆえ、ある一定以上の年齢の方は金木犀がトイレを想起させることが多いらしい。誰が高齢者だ。

その名残りから、金木犀の香りとトイレの芳香剤・消臭剤は馴染み深いものであり、現代まで続いている。

 

というか昔は家の庭で金木犀を植えて育てていたのね。
見てみると、日本の気候にも適しており、結構育てやすい木らしい。なるほど。

 

これが金木犀ってことで良いのか

ただ、僕は金木犀の実物の香りを知らない。これが金木犀の香りってことで良いのだろうか。

 

というのも、例えば桜の香りのコスメなり芳香剤があったとする。

春になると出てくる、限定の「桜の香り」。これは果たして本物の桜の香りだろうか。否。結構色々な"混ぜ物"をして本物に似せているだけ、ということもしばしば。

 

そもそも「桜の香り」って?
エッセンシャルオイルでもそうだが、例え同じ植物でも抽出するパーツによって香りは全然異なる。
それに、例えば花見をしているときであっても桜の花に顔を近づけて匂いを嗅ぐわけではないだろう。桜の香りに求められる役割は決して「香りのリアリズム」ではなく、むしろ「そういう雰囲気を想起する」ことであろう。

それゆえ、各ブランド・各メーカーの出す「桜の香り」は同一ではない。あるメーカーは純恋な清潔感のある石鹸のような香り。ある海外メーカーは藤の花や他の日本の植物と合わせた慎ましい香り。あるメーカーは桜餅みたいな匂い(つまり"花"じゃなく"葉"の香り)だったり。

 

話を金木犀に戻す。

なので「これが金木犀の花そのものなのかどうか」という疑問が湧くのである。

金木犀の花に顔を近づけて匂いを嗅いだ時のイメージなのか、並木道みたいなところを通るイメージなのか、 いつもの通り道に植えてあった金木犀の木が開花したときのような全体的な雰囲気に差し色として出現した香りなのか。

 

人によって金木犀との関わり度合は異なるし、これまた正解のない話だ。

敢えて正解を出すならそれはもう純度100%のエッセンシャルオイルが正しく金木犀の香りではあるが、もしかすると金木犀の香りが好きな人であっても「えー、なんか違うね」となるかもしれない。
こうなると香りの純度・精度・再現度としては正解なのに、需要に対するマッチング度合いとしては不正解なのである。難しい。

 

ニベアの金木犀の香り

ニベアにもニベアのイメージする金木犀の香りというものが存在する。

ニベアの公式Xより、香りのピラミッドが公開されていた。

おいおいおい、金木犀が無いじゃんよ!

これは衝撃。「ふーん。これが金木犀かぁー」じゃないんだよ。

ファンタのグレープ味が無果汁だったのを見た時と同じくらいの衝撃。グレープ味って何だったんだよ、っていう。

 

しかし実は金木犀の精油は供給量が低いらしく、ぶっ飛んで高い。それでもローズ精油ほどぶっ飛ばないが、混ぜ物のないピュアな精油ならば1mlで10,000円近くすると思う。*4

もし本物の精油を入れたら、最低でも数百円~下手すると千円以上値上げしないといけない。ニベアのブランドイメージもあるので、金木犀の香りだけが急にそんなに高かったら売れなくなるだろう。

 

というわけで、これがニベアの努力の結晶によるイマジナリー金木犀なのである。

  • トップノート:ベルガモット、ジャスミン、ローズ、イランイラン
  • ミドルノート:ピーチ
  • ラストノート:ムスク

すごい。
一見脈絡のない組み合わせに見えるが、例えば金木犀に含まれる「γデカラクトン」はピーチの香りに類似する。これはミドルノートに含まれている。

イランイランやベルガモット、ジャスミンの成分として含まれる「リナロール」も金木犀の香りの構成要素。

金木犀を使わずに金木犀の香気成分を合成していく。これはもうサイエンスである。

 

 

改めて、ニベアの企業努力に感嘆しながら、ボディミルクの香りを嗅いでみる。

うん、やっぱりトイレだ、これ。

良い香りだよ。良い香りだと思うし、好きなんだけどね。

*1:アルガンオイル、水添ポリイソブテン、パルミチン酸イソプロピル

*2:グリセリン、グリコーゲン、グリセリルグルコシド

*3:ローズヒップオイル、オウゴンエキス、PEG-8

*4:なお、ローズの精油は1mlで20,000円するものもあるが、ローズは世界的に需要があるため入手しやすい廉価品も多い。金木犀は欧米では馴染みが無く、需要と供給の面でローズと異なる。