
バレンタインが近付いてきた。
日本に於いてバレンタインデーとは「女性が男性にチョコレートを渡す日」として根付いている。
やれ「海外では性別関係無く渡す日」だのジェンダーがどうのチョコレートメーカーの陰謀がどうのと言われ続けてきているが、それでも意味合いは変わらずに現代に至る。
日本でのバレンタインデー
バレンタインデー自体は海外でもある文化だし、むしろ海外から日本に入ってきたものではあるけども、その意味合いはやや異なる。
バレンタインデーの成り立ちは諸説あるのでお調べいただくとするけども、簡単に言えば恋人たちの祝日として浸透している。単にプレゼントを渡すというよりも、もっと直接的に愛・恋に関する日である。
日本に入ってきたのは戦後だが、当時はそこまで浸透はしていなかった。
その後チョコレート会社やデパートが便乗しだして浸透したのが1970年代後半とされる。
現在においては、意中の人のみならずお世話になった人にもチョコレートを渡したりする。いわゆる義理チョコである。
そして、バレンタインデーに女性から男性に送ったお礼として、男性から女性へお返しをする日としてホワイトデーというものがある。
義理チョコとホワイトデーに関しても1970年代に日本国内で広く浸透したと言われる。
ちなみに海外のバレンタインデーは性別は関係が無い。恋人や親しい人等に渡したり渡されたりする。ゆえにホワイトデーという物が存在しない。
また、日本では贈り物として選ばれる物はチョコレートがほとんどを占めるが、海外では特にチョコレートに限定しない。
以上の2点が日本と海外との差となる。
コンビニでのバレンタインチョコレート
何でも揃うと言っても過言では無いコンビニ。
もちろんバレンタインのチョコレートも揃う。
しかし、これは特にホワイトデーの話だが「スイーツに疎い男子諸君がお返しの準備をすっかり忘れ、コンビニで売っていたもので済ませる」という展開は想像に容易い。
スイーツを知り尽くした女子たち――いわゆるスイーツモンスターの中でもコンビニのチョコレートほどヒエラルキーの低い贈り物は無かった。「The 義理」と言っても良いクラスのチョイスだった。
何も知らない男性陣がその地雷原へ向けて一直線に突き進む様を何度となく見送った過去もあるが、どうして最近のコンビニのバレンタインはしっかりしている。
ちょっと前からはコンビニでもゴディバやモロゾフを扱うようになった。とはいえ専門店ではなくコンビニで買ったことはバレるような商品だったが、幾分かはマシである。
そしてここ数年では様々なショコラティエとのコラボやスイーツカテゴリーの強化によって、もう専門店と遜色ないクオリティになってきた。
(渡される側がコンビニで取り扱っているラインナップを把握してたらそれはそれだけど)、バレンタインの贈り物の調達をコンビニで済ませてしまっても、もはや問題は無いのでは?というくらい。あんまり街中や催事場を覗けないや、って人はコンビニも選択肢のひとつに入れてみては?
2021年のコンビニ各社のバレンタインチョコレート
今年の動向をまとめてみる。
セブンイレブン
セバスチャン・ブイエが手掛けるチョコレートアソートは、フルーツを真ん中で切ったかのような遊び心のあるデザイン。
ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマのショコラティエが手掛けるセブンイレブン限定のアソートボックスも扱う。
定番のゴディバや京都のクラフトチョコレート等も扱う。
ローソン
ローソンもずっとゴディバとコラボしたスイーツをリリースし続けていたが、もちろんバレンタインもゴディバ製品が出ている。ゴディバのシグネチャーと言っても良い、独特の形をしたトルビヨンも入ったアソートが発売。
ファミリーマート
ケンズカフェ東京とのコラボが人気を博しているファミリーマート。昨年はエクアドルスペシャルというラインナップを大々的に推していたが、今回のバレンタインでもがっちりタッグを組んだコラボを展開する。
アソートボックスはカラフルなチョコレートが並び、見た目も美しい。
買ってみる
コンビニ各社の力の入れようが伺える今年のバレンタイン。
今年はデパートの催事場で売るようなタイプのチョコレートは逆風となっているが、その分コンビニにとっては追い風であると言える。バレンタインにチョコを送る行為自体が自粛されているわけではないからね。買う数、買う人等の全体数は決まっていてあまり変化が無く、それをどこで買うかという違いである。
今回買ってみたのはセブンイレブンのテオブロマ コレクション。
ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマを手掛けるショコラティエ、土屋氏によるセブンイレブン限定のシリーズが「テオブロマ コレクション」である。
ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマは、洋菓子職人として40年のキャリアを誇る土屋氏によって1999年にオープン。渋谷区に本店を構え、同じく都内にのみ支店を構える。
デパートの催事場でも展開していることがあり、「テオブロマ」という名前は聞いたことがある人もいるかも。
ちなみにテオブロマはカカオの学名が由来。その語源は「神の食べ物」という意味である。
世界中から厳選したカカオ豆を使用している。とはいえ、ある意味そこは当たり前じゃん?そりゃあショコラティエなんだもの、カカオ豆に拘らずしてどうするという話。
結果として、重要なのは味と価格。サブの要素として希少性だったりこだわりだったりのストーリーやブランドとしてのパワーが出てくるわけで。
全く重要ではないとは言わないけども、そういったサブの要素に拘った結果としてメインとなる味に大差が無いならば、それは商品としての立ち位置を見つめ直さねばならない事を示唆する。
コンビニで出す、という事は良くも悪くも一気に多くの人目にさらされる事となる。コンビニとコラボに漕ぎ着けて商品化したものの、掻き乱されて失敗した商品も少なからずある。
食べてみる
こういう類いの製品にある共通認識としては「不味いわけがない」というのがある。そりゃあもちろんそう。
そのもう一段上の想いとして「他のチョコとの違いが知りたい、探りたい」というものがある。例えば板チョコとの差が感じ取れなければ「だったら同じ値段分板チョコを食べた方が良い」となってしまう。いわゆるコスパの話である。
高級ブランドに対して何を以て価値とするかは難しい所である。ブランドそのものも価値となっている部分も少なからずある。
例えばゴディバが市販の板チョコを溶かしただけのチョコを高値で売っても面白いくらいに売れるだろう。(もちろんその後徐々に顧客は離れてしまうだろうけども。)
これは、それだけ「ゴディバのブランド力が強くなっている」という事を示す。そのブランド力の大小の差はあれど、そのブランドのものを購入すること自体にも価値を見出す事が出来る。これは味に直結しない部分での価値なので単純な比較が難しい。
そういったアレコレを取り除く。
重要なのは「おいしいかどうか」。そして「価格に見合うかどうか」だ。

パッケージは黒いマットな箱でおしゃれ。
あまりに華美だと「本体にお金を掛けてほしい…」ってなってしまうのだけど、適度に高級感があって良い。
ちなみにラインナップは5個入りが税込810円、7個入りが1,080円。トリュフが6個入ったものもあり、こちらは918円。
今回買ったのは5個入り。レジでショッピングバッグも付けてくれる。このままプレゼントすれば、まるで専門店で買ったかのようになる。確かにレジ袋じゃ味気ないもんね。

開けてみると、5個のチョコレートがお目見え。
チョコレートのアソートボックスって良いよね。まるで宝石箱のようで、色とりどりで様々な形のチョコたちがキラキラと輝いている。見るだけで幸せな気分になる。

味は、「キャラメルガナッシュ」「はちみつ風味ガナッシュ」「コーヒーガナッシュ」「レモンガナッシュ」「ビターガナッシュ」の5種。
どれも個性的でありながら、取っ付きやすそうな味わい。例えば5種の中にパッションフルーツなんかがあったりすると人を選んでしまうからね。柑橘系とチョコレートの組み合わせが苦手な人は、意外と多い。
キャラメルガナッシュ

ガナッシュの説明って毎回難しいなって思ってるんだけど、「チョコの中のなめらかなやつ」という説明が一番的を射ていて良いなと思っている。
外側をかじった中にある固くない部分がガナッシュ。って感じで認識すれば問題無いと思う。たぶん。
まずはキャラメルガナッシュからいただく。
普通においしい。キャラメルとチョコだもの、合わないわけが無い。
ただし、事前にテオブロマのチョコだと言われていなければそう思わなかったかもしれない。万人受けであり、没個性とも言えるシビアな味わい。
ガナッシュは口当たりも良く、甘すぎない。
コーヒーガナッシュ

一口かじると、グッとコーヒーが来る。
このコーヒーがチロルチョコのコーヒー味のようなピーク感でやや大味。しかし徐々にカドが取れてきて最終的にはチョコレートとしっかりと並走する。
スタートダッシュをキメるコーヒーガナッシュ。後から追い付くチョコレート。そんなハーモニーが楽しめる。
そのバランスで来るか、となる一粒。
外側の層も、ちゃんと中のガナッシュに合わせて味ごとにチューンされている。
こちらのコーヒーガナッシュではややビター感のあるチョコレートを楽しむ事が出来る。
はちみつ風味ガナッシュ

そういえばはちみつってあまり使われない題材だな、と思いながら。
はちみつとチョコレートって合うのに、ことショコラティエの方が採用しているのはあまり見かけない気がする。
はちみつが強すぎるからかな。
…と、思いを馳せながら食べてみる。
はちみつがグイグイと攻めてくる。はちみつの香料だけじゃなくてはちみつもしっかりと入っていそうな濃密な味わい。チョコレートはミルクチョコレートで、甘々な世界観を作り出している。
かなり甘みが強く、蜜の香りが鼻をくすぐる。甘いのが苦手な男性に送るとアレかも。いやそもそも甘いのが苦手な男性にチョコをあげないか。
レモンガナッシュ

唯一の柑橘系ガナッシュ。
このアソートはあまり攻めている感じがしないけども、テオブロマ自体がそこまで奇を衒ったフレーバーを推していない。フランボワーズやパッションフルーツの味も扱うが、10個程度のボックスだとそういった味は入らない。ただバジル味はやたら推しているけども…。
さて、柑橘系のフレーバーでのキモとなるのは"苦み"と"酸味"のバランス。
風味を強くしたりリアリティを追求すれば良いというものでもなく、あくまでも主役はチョコレート(で居てほしい)。
食べてみるとフルーツ系チョコらしい、フレッシュな味わいが広がる。瑞々しいレモンの味わい。苦みや酸味は穏やかめに設定されていて、チョコとの馴染みも良い。
トップにはレモンピールがあしらわれている。こちらも砂糖がまぶされていて甘め。果皮の苦みはほとんど排除されているため、レモンの甘さと酸味が楽しめる。
ビターガナッシュ

中央にあったしシンプルそうな味だし、多分これが主役だなと。
変な話、混ぜ物に頼っていてそこまでカカオのこだわりが感じられないメーカーもある。そういう言い訳や隠れ蓑の一切を排除したフレーバーと言える。
食べてみると、「これぞ」と言いたくなるような味わい。この値段の範囲ならば全然良いのでは。コクと豊かさ、深みも感じる。鼻に抜ける香りも良い。
カカオ70%くらいのビターさ。やや甘さに頼ってしまってはいるけども、充分においしい。
まとめ
何より安い。このアソートボックスでも1000円もしないで買えてしまう。
これで「テオブロマってこんなもんかぁ」と判断されてしまうのはやや勿体ない感もあるけども、コスパ良く楽しむという点では優れている。