親知らずを抜きまして。
抜く気無かったんだけどなぁ。
親知らず。
言わずもがな、乳歯と違って親が気付かないうちに生えるから親知らず。
昔は寿命が短かく、子に親知らずが生えた事を知ることなく親は亡くなっていたので、という説も。
英語だとWisdom toothなんて言ったりして。直訳すれば「知恵の歯」。これは物事の分別が付く年齢になった頃に生えるから、というもの。なんかおしゃれ。
親知らずは昔は別に要らない歯では無かったんだけど、現代人にとっては要らない歯。
進化の過程で無くなるべき歯なんだけど、まぁそんな少しの歴史じゃ無くなるところまでは進化しないよねぇ…。だんだん親知らずはサイズダウンはしてるらしいんだけど、それよりも顎が退化してるせいで変な生え方をしがちだそうで。
抜くか抜かないか
親知らず=抜く、といううものでもなく、人畜無害な親知らずも世間にはいるらしい。
あと、宝くじの3000円が当たるくらいの割合で親知らずゼロな人もいるらしい。
そもそも親知らずが生えてきたとしても、痛みが無かったり支障が無ければ抜く必要は無い。むしろその一本余分に生えた奥歯を支えとして入れ歯等の支台にも利用できる。
とはいえ、大体の場合がブラッシングが行き届かないので、どうしても細菌が溜まりがち。つまり虫歯のリスクが高い。
親知らずと隣の歯の間に物が詰まったりしてしまうと、放っておくとお隣の歯もろとも虫歯になってしまう。あとは横向きに生えて隣の歯を圧迫していたり、歯茎に炎症を作っていたりする場合にも抜いた方が良い。
上顎と下顎
上顎と下顎で比べると、下顎の方が痛いし難しい。ほら、下顎の方がよく動くじゃない?喋るときにしても食べるときにしても。よって、処置後に腫れたり痛みが出て支障が出るのは確実に下顎の方。
神経や生え方としても下顎の方が難易度が高くなる傾向が強い。上顎でまっすぐ生えているのが一番抜きやすく楽。下顎で横向きに生えているのが難儀。
処置
真っ直ぐ生えてる歯はテコの原理でグイっと抜くだけ。
問題は横向きに生えている歯。こちらは一回歯茎を切開しなければならない。要は一回周りをべローンと剥がして該当の歯の根元を露出させる。
その後、歯を砕いて回収し、縫合する…という流れが多い。この時、神経に触れてしまうリスクがあり、そうなった場合は長いと半年くらいの後遺症が残る。
発音が不自由になったり腫れが出たり等の物理的な物もあるし、軽い麻痺・しびれやごくまれに味覚に影響を及ぼす場合も無くはない。
一度に複数本の歯を処置する場合、入院することもある。その場合は大きめの病院などで行う。
その他、口腔外科で局所麻酔で日帰りで行うのは難しい、と判断した場合も手術室で行うケースがある。
もちろんある程度のシナリオは決まってるんだけど、あとは人によって生え方も違うし…という事で担当医の腕が試されるのだ。
たかが歯、されど歯。大規模な手術ではないが、死ぬリスクもゼロじゃない。
僕の場合
さて、僕の場合は親知らずが4本ともある。
今年の春に車をぶつけられて通院していた時に首のレントゲンを撮り、ついでに親知らずも発見。「おおー…これは抜かないとねぇ(笑)」って先生に言われた。何がおもろいねん。
親知らずを認知したのは、それよりも少し前の去年の秋。結構歯がズキズキと痛くて、この痛み方は確実に恋か親知らずかのどちらかだろうと思っていた。
そう、去年の秋――11月3日に歯医者へ行こうと思って。なんでピンポイントで覚えているかというと、この日は土曜日で午前の診療のみだったからそこへ行こうと思ってたのね。ちょうどアヒルでライブがあって、その入り時間の前にパパっと見てもらおうという算段。
そしたら歯医者が閉まってて。よくよく考えたらこの日は祝日、文化の日だったのね。土曜日の祝日って本当にアレ。というわけで歯医者に行けずロキソニン先輩にお世話になって誤魔化した次第。
その後、痛みは無くなり、「歯医者へ行った方が良いのかな」「でも痛くないし」とのらりくらりと揺れに揺れて、一年経過して今である。なんだろう、秋になると痛くなるのかな。親知らずには冬眠してほしい。
後から聞いた話だと、疲れると痛くなりやすいらしい。
そういう要素が絡むとなると、もしかすると寒くなってくると痛むようになるのかもしれないと推測する。
兎にも角にも、ずっとロキソニンで騙し騙し過ごすのもコスパが悪いし根本的な解決にはならないので、歯医者へ行くことにした。
僕は久しく歯医者などという場所へ行っていない。
今までの文から推察するに、きっと僕の事を病院嫌いか面倒くさがりだからだと思う人もいるだろう。しかし違う。
病院は割とすぐに頼るタイプだ。だって医者はその道のプロだし。自己診断で市販薬をそれとなく買って済ませるのはアマチュアだ。それで効いていると思えるのは安心感が半分を占めているかもしれない。
何度も同じ症状に悩まされていたらだんだん自己診断の精度は上がってくるかもしれない。でも、病院に最初から行けば一発な事が多い。数多くの症例を見ている頭の良い先生がいるわけですし。保険適用なら市販薬より安上がりな事も多い。時間短縮にもなる。
そう、僕らはアマチュアの域を出る事は出来ないので、さっさとプロに頼るべきなのである。アマチュアって何?
ちなみに後者の面倒くさがりは半分当たってる。
いざ、歯医者へ
最後に歯医者に行ったのは小児歯科だったはずなので、小学生の頃だ。そこからずっと幸いな事に虫歯ゼロ、口内のトラブルもゼロで来ている。争いごとは好まないタイプ。
ゆえに、歯医者の記憶もおぼろげだ。ただし、別にあの機械の音とか空気感とかは嫌いじゃない。
当時はもちろん親が日時や予約も全部手配していたので、混み具合とかが分からない。
よく分かんないし電話も苦手なので突撃。こんにちわー、1人ですけど空いてますか?
受付であらましを説明しつつ。さすが平日の午後イチ、って感じで無事に空いてまして、診察を受ける。
とりあえず初日なので、事情を説明して写真を撮ってもらう。ピース。
そこにはばっちり親知らずの姿が4つ。鉄壁のディフェンス。しかも下の親知らずは横向きに生えていたのであった。なんてこった。
幸いな事に埋もれたりせずにしっかり生えているので、そこまで大がかりにはやる必要も無いらしい。セーフ。
あと、めちゃくちゃに歯の強さを褒められた。非常に強いらしい。
現状としては、左が痛いのね。右はなんとも。
で、左の上の歯がなんと欠けていて、中身が丸見えらしい。歯の内部組織は弱いので虫歯になったりしやすいし、そこから菌が増えても困る。
下の歯は今抜いてしまうと色々と支障が出るので、予定を考えたりしつつ。ライブにかぶったりすると困るし。
今抜いちゃえばライブに影響は無いと思ったんだけど、まぁとりあえずライトで緊急性の高い歯から試すかーって感じで。左上の欠けた歯をチョイス。
なんか尖ってると思ってたんだよねぇ。欠けてたのか。
そして抜歯
「次いつ来ます?」「えーと、じゃあ明日で」
これはフリーランスの強みだよね。1週間ごとに決まった曜日に行く、とかしなくて良い。他のアポイントさえ無ければ自分の予定をスライドさせれば良い。
というわけで翌日、定時少し前。待合室で手塚治虫の火の鳥を読みながら待つ。
程なくして呼ばれて部屋に入って、改めて意思確認。まぁその欠けた歯に関しては残しておく方がリスキーで遅かれ早かれ抜くべきだったので、じゃあもうササっと抜いておくれ、って感じで。
麻酔を歯茎にぶっ刺す。なんか左頬の感覚に違和感。ウルトラ久々なこの感覚。
そういえば歯を抜くのは初めてだ。小学生の頃は虫歯で歯を削ったりしたことはあるけど、永久歯のトラブルは一切無かった。
どうやって抜くのかなと思っていたら、口をグイっと開けてグリグリと探り出した。
あ、そっか、冷静に考えたら歯を抜くってペンチ的なアレでスポって抜くのか、と気付く。もう令和だというのに、なんと力任せで短絡的でシンプルなのだろう。
歯が欠けてるせいか、思うように掴めないみたいで難航。先生も「んー…難しいな…」とブツブツ言っている。不安になるからやめてくれ。
痛みは麻酔のおかげで一切感じないけど、それよりも口を広げる指の力が強いし、怖い。まぁ奥歯だしね。狙いにくいしね。
そして5分ほど経過。
アゴの中にて、ミシミシ…という音を骨伝導的に聴く。そういえば骨伝導スピーカーの携帯電話ってあったよね。あれってどうなったんだろう…って考えた瞬間、どうやら終わったようだ。
終始痛みが無かった。もしも麻酔が無かったら、もう歴史の教科書に出てくる拷問と紙一重だよ。
もちろんダラダラと血が出ているので、しばらくはガーゼ的なティッシュ的なサムシングを噛んでおく。
このままかさぶたを作って自然治癒で塞ぐ必要があるので、うがいはなるべく控える。食事等もなるべく逆サイドで。アルコールはNGらしい。
そして1日経過したんだけど、特に痛みも腫れも無く、穏やか。
一応ロキソニンも処方してもらったけど、麻酔が切れてきたときに予防的に飲んでおいた1錠のみで済んでいる。
今後の親知らず計画
さて、とりあえず4本あるうちの1本をクリアーした。(タイトルが"その1"なのは1本目だから)
残りは左下がじんわり痛かったり痛くなかったり。右は上下ともに痛みは無い。
となると、右サイドは抜いたり処置したりする緊急性は低い。
左下は痛みが出たりするのでどうしよう、という感じ。
年末は何かとアレなので、やるとしたら年明けかなぁと考える。
ほとんどの人が生えてくるという親知らず。皆様も一度診てもらっては?
※注*1
*1:本記事の内容は個人の体験に基づく記述であり、事実と異なる場合や例外が含まれる場合があります。本記事を元にした自己判断はせずに、必ず医療機関にて診察を受けてください。また、本記事によって何かしらの不利益が生じた場合にも、筆者は一切の責任を負いかねます。