楽曲制作をするときに、持っていると何かと便利なWavesのプラグイン。
そんなプラグインの中でも使用頻度の高いイコライザー。Wavesからも色々なイコライザーが出ている。今回はそんな多様なイコライザーの中から最もベーシックであるQ10 Equalizerについてご紹介。
Q10 Equalizerとは…?
Q10はWaves社のマルチバンドイコライザー。
最大10バンドのデジタル系EQであり、精度も高い。細かな補正から大胆な修正まで様々な用途に使える柔軟なイコライザーで、各トラックのミックスにもマスタリングにも使える。
LRそれぞれのモノイコライザーとしても使えるし、ステレオイコライザーとしても使える。
見た目
シンプルで分かりやすい見た目。
上部は実際のEQが確認できるグラフィックディスプレイ、下部はそれぞれのパラメーターが表示されている。
音の流れ
イコライザーに入った音はバンドごとにGAIN(増幅度)、FREQ(周波数)、Q(幅)、TYPE(フィルターの種類)を決めて調整する。
イコライザーは目立たせたい周波数をより強調したり余分な周波数をカットしたりするような役割で使う。補正として使うことが多いが、積極的な音作りにも使える。
INPUT(入力)
入力音。つまり、このイコライザーへと入ってくる音の大きさを調整するセクション。音がオーバーすると音が割れてしまうので、オーバーしない様に調整する。
デフォルトは±0dB。0dB~-24dBの間で調整可能。もしくは必要に応じて手前の処理の時点で音量を調整しておく。
ピークに近い音量で作業をすると色々と不便なので、-3dBあたりにしておくと作業が楽。
なお、「Ø」は位相反転スイッチ。マルチマイクの素材を扱う時やケーブルの誤配線対策に使ったりと、使用機会はそこまで頻繁では無いけども有ると便利なボタン。
コントロールセクション
すべてのコントロールは、10個のバンドに対してそれぞれ独立して調整可能。
BAND(帯域)
各バンドの番号横のマーク*1をクリックすることでオンオフを切り替えられる。それぞれのバンドの影響をチェックするときには頻繁に使う事になる。
番号ごとの特性の違いは無いので、もしも10個全て使わない場合は好きな番号を選んで使って良い。けども、低域~高域で番号順にした方が操作はしやすい。
GAIN(増幅度)
それぞれのバンドごとにブースト(増幅)、またはカット(減衰)させる事が出来る。-18.0dB~+18dBの範囲で使えるため、かなり大胆な調整も可能。
Freq(周波数)
それぞれのバンドのフリケンシー、つまり周波数を指定する。どの周波数を中心として影響を与えるかを選択できる。
16Hz~21.357kHzまでの範囲で使え、基本的な使用には不自由しない。
Q(幅)
Qはクオリティの略。イコライザーに於いてはそれぞれのバンドが影響を及ぼす範囲の幅を表す。数値が大きくなればなるほど影響を与える周波数の幅が狭くなり、数値が小さくなると影響を与える周波数の幅が広くなる。
0.5~100までの幅があり、80以上だとかなりピンポイントなコントロールが出来る。
デフォルトは7.0。
TYPE(フィルタータイプ)
6種のフィルタータイプから選べる。
左から、
- バンドパス(ベル)
- シェルフ(ロー・シェルフ/ハイ・シェルフ)
- パス(ロー・パス/ハイ・パス)
- プロポーショナル
が選べる。
バンドパス(ベル)
最も一般的なフィルタータイプ。指定した帯域(バンド)の音を通過(パス)させるからバンドパス。形から"ベル"*2とも呼ばれる。"Freq"で指定した周波数を中心として動作する。
Qを小さくすると広い範囲の補正に役立つ。この場合はなだらかなゲイン幅にして使う事が多い。逆にQを大きくすると、問題のあるノイズ等の周波数を狙い撃ちして除去したりする用途に向いている。
ロー・シェルフ/ハイ・シェルフ・フィルター
指定したゲインまでなだらかに変化する。形が棚みたいだからシェルフ。
Freqで指定した周波数ではゲイン値の半分まで変化し、ハイシェルフならばFreqの倍の周波数でゲイン値まで上昇、ローシェルフならばFreqの1/2倍の周波数でゲイン値まで下降する。
使いこなすと便利ではあるけども、前述のバンドフィルターと次に出てくるパスフィルターで事足りてしまう事も多い。
ロー・パス/ハイ・パス・フィルター
指定したFreq以降の音を徐々にカットしていくフィルター。超高音域や超低音域を削り取る目的で使われる。
このフィルターはQやGAINの影響を受けない。指定のFreqで-3dB、倍(ローパスは1/2倍)のFreqでは-12dB、4倍(ローパスでは1/4倍)のHz値ではほぼゼロとなる。
マイクで録った音のうち。特に低域の聞き取れないような範囲の音が入っていると他のプラグインに影響を与えてしまう。よって、必要のない音域はこういうパスフィルターを使って無音にしちゃうのは有効。
プロポーショナル・フィルター
プロポーショナルは「均整の取れた」という意味。このイコライザーに於いてはゲインに比例してQ幅が変化するフィルターを指す。
上の画像の③と⑤のQ幅は同じ"4"だが、⑤の方がより鋭い。つまりゲインに応じてQも大きくなっている。
あんまり…使わないかな…。でも何かしらの需要があったので作られたフィルターのはず…いつ使うんだろう…。
OUTPUT(出力)
アウトプットはこのイコライザーの出口に当たる。それぞれのバンドで調整し終えた音たちの最後の調整の部分。
フェーダー
インプットと同じようなメーターで音量を調節できる。-24dB~+12dBの範囲で調節する。こちらもインプットと同様、音がオーバーしないように。
TRIM(トリム)
クリップせずにアウトプットを最大にすることが出来る。
出力にまだ余裕がある場合、トリムを押すとクリップしない範囲で可能な限り高い出力となる。
出力が既にオーバーしている場合、トリムを押すとレベルが下がりクリップが回避できる。
トリムに表示される数値は現在の音量からピークまでの残りを表す。
この後も加工をしていくようなトラックであれば、ある程度の余裕を残した方が後の作業が楽になるので、一概にデカければ良いってものでもない。
リンクボタン
右下のリンクボタンを押す事で、左右を独立させた調整も可能。
「左チャンネルはいじりたくないけど右チャンネルはちょっと高域を抑えたい…」なんて時にも役に立つ。
わざわざ左右のチャンネルを分けて調整するのは意外と手間なので、こうして一つのプラグインの内部でLRごとに分けれるのは痒い所に手が届く感じ。
グラフィック上で直感的な操作も
グラフィックをクリックしたりドラッグすることで直感的に操作が出来る。
- 矢印キー=上下でGain、左右でFreq
- ドラッグ=Gain,Freqを同時に操作可能。上下でGain、左右でFreq
- Ctrl+ドラッグ=Gain,Freqのいずれかのみを操作できる(片方はロック)
- Alt+ドラッグ=Q幅の操作
- ダブルクリック=オン/オフ
最初にグラフィック上で大まかにいじって、その後細かい数値を詰めていく方が使いやすいかもしれない。
2つのビュー・モード
「フル」モードと「フォーカス」モードを切り替える事が出来る。
フル・ビュー
10個のバンドのコントロールがすべて表示された状態。大まかな調整や複数のバンドに関係する調整にはこちらのモードで。
フォーカス・ビュー
一つ一つのバンドを細かく見る事が出来る。グラフィックもやや拡大されるので、より視覚的にも捉えやすくなる。
豊富なプリセット
一からいじっていくのも良いけども、即戦力となるプリセットも豊富。
プリセットを嫌がる人も多いけども、その道のプロが用意しているプリセットだから使い勝手は抜群。プリセットから調整していくのは時間短縮にもなる。
価格
標準では18,000円(税別)ほどで購入可能だが、セール中には3,000~4,000円で買う事も出来る。(プラグインにはよくある話だけど、セール中の値引き率が尋常じゃない。)
また、Wavesは単体で買うよりもある程度まとまったバンドルの方がお得なのでそちらがオススメ。
Q10はだいたいのバンドルに入っている。それだけ標準的で使い勝手が良いという事。
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まとめ
Waves Q10 Equalizerはデジタル・イコライザーで変なクセが無いため、使い勝手が良く初心者にもおすすめ。
そのうえ動作も軽く、様々な調整も可能。あらゆるシーンで使えるプラグインとなる。
迷ったらとりあえず入手しておくと間違いないプラグイン。その後、必要に応じて個性的なイコライザーを買い足せば良い。ようこそイコライザーの泥沼へ…。