なんて下世話な。
いや、でも語るのは今かなと判断した次第。
僕ってほら、それなりにお金に不自由してなさそうで、何の仕事をしてるのかは具体的によく分かんないけど、そこそこに良い暮らしをしてそうじゃない?
でも、それは僕のある一面をある方向から見ただけの話。それが事実かどうか、深い部分は誰にも分からない。
この話の深い部分に関して、僕はずっと言う気が無かった。
これは僕が長年を掛けて作り上げてきたイメージ。言い方を変えれば虚像ですらあり、僕が作り上げたホログラムのようなものだ。
僕は生涯ネタばらしをするつもりは無かった。自分で創ったものを自分で壊すなんて贅沢すぎるからね。
僕が全ての借金を返済し終えたのは、本当にここ1~2年のこと。
それまでは5社くらいから借金があった。
それも全て僕のイメージを作るため。そして自分に完済の自信があったから。
僕はバンドマン時代から、貧乏に見えるようなイメージの一切を排除し、どの角度から見てもそうならないようにしてきた。
カップラーメン等の安価なジャンクフードは口にせず、マカロンと紅茶でティータイムを嗜むような部分のみを切り取って表へと浮かべた。
まぁ実際そういった紅茶なんかは元々好きだったから、本当にほぼ毎日飲んでいたしね。
紅茶そのものはエレガントに映る上、茶葉をまとめて買えばそこまでリッチな物でも無い。むしろペットボトル飲料を毎回買うよりも安いくらいだ。
あとはたまにちょっと良いブランドの紅茶も買って、そういったものが印象に残るような操作を行う。ブランド紅茶は月に一回買う程度だったが、ネット上では生活のすべてが見えるわけでは無い。ゆえに、その断片が僕の日常として投影される。
だが、そういった物を買い揃えていくと、もちろんお金が無くなる。
僕は他の趣味の一切を無くし、お金のかかる交友関係も全て断ち、イメージのための投資しかしなくなった。
当時の友人や恋人から見れば、僕は相当にケチだったに違いない。
僕はバンドに全てを費やしていたし、それに付随するイメージに全てを投資していた。
そのどちらにも貢献しない交友は意味を持たなかった。1日ちょっと遊んだだけで1万円近く飛んでいくのが無駄にしか思えなかった。
こうして交友関係はほぼ皆無になった。何かを得れば何かを失うのである。
楽器はもちろん借金かローン。バンド活動も比較的派手に行い続けた。
僕は僕の道を信じ、これくらいの額なら将来完済出来ると信じていた。この信じる力が無ければ、とうに諦めていただろう。
僕はバンドマン時代、社会人では無かった。学生でも無かった。社会的な証明は持ち合わせず、言わば何者でも無かった。免許を持つ前――20歳くらいは自分の証明手段が何一つ無い事に形容しがたい恐怖もあった。
最終的に、バンドの活動だけでは借金を返済する事は出来なかった。
ただし、残り数十万円くらいには減らす事が出来た。
そしてそれらの借金も、やっと利息も含めて完済となった。これが真実である。
今でこそ、それなりに不自由しない生活を送る事が出来ているが、実はついこの前までは借金返済生活を送っていたのだった。
「親が金持ちなんでしょ」とか「あいつは好き勝手自由にしている」と思わせ続けられていたのならば、僕の思惑通り。
だって、バンドマンは夢を見せる仕事でしょ?僕の憧れた人たちはみんなそうだった。
僕もそうなれていたのかな、とふと思いを馳せる。
あとがきとして、自分の意見を交えながら補足する。
僕は、完済のプランが立てられるのならという前提付きだが、借金は賛成派である。
大きなプロジェクトを動かす時、やはり先行投資は必要となる。資金を少額寄せ集めただけで行うと、どうにもショボいものとなる。そのチープさがハンドメイド感があって好感が持てるときもあるが、その判断は慎重に行わねばならないと思っている。
出すところを出す、絞るところは絞る、とメリハリを付けると良いと思う。
もう一つ。バンド活動のみでは資金が減り続ける事が多い。何せお金が出ていくシーンが多過ぎる。もちろんそれぞれの理由・やり取りは真っ当な物だが、バンドマンにとってツラい出費が多い。例えばライブハウスの出演料。そしてCDを作るにもお金が必要だ。
しかし、そういったバンドマンに使われる側の仕事も決して儲かるわけでは無い。互いにギリギリのお金を回し合っているのだ。
これを打破するには、「界隈でお金を回す」のではなく「外からお金を持ってくる」必要がある。
音楽界隈はお金が少ない。そこで回し合っても潤いづらい。なので、外部からお金を引っ張ってくるのが正攻法と言える。この手法はそれぞれに委ねる。
僕はこの辺の手法でやっと借金完済となった。
資金繰りの具体的な方法を期待して読んでくれたバンドマンには悪いが(居るかどうか分かんないけど)、この具体的な手法は僕の財産なので公開出来ない。
以上が、僕のかつての正体である。
最近は朝起きたらコーヒー豆を挽いて、ジャズを流しながらゆったりくつろぐのが日課だ。