蕎麦ってどんなイメージがありますか?堅い?取っ付きにくい?
東海地方、及びそれよりも西の地域ではあんまり蕎麦を食べる風習が無いのかも。
「せいぜいサガミで食べるくらい」って人も少なくないと思う。
あとはマナーが色々とあるようなイメージもあるよね。
寿司とかもそうだけど、昔ながらの和食って色々と食べ方や作法があったりもして取っ付きづらさを感じなくもない。
その中でも蕎麦は最たるものかも。
歴史が長い食べ物は作法も多い…?
蕎麦のマナーとしては、
- 音を立てて食べても良い
- 蕎麦をつゆに浸け過ぎない
あたりがとりあえず有名なところ。なんか昔の書類に作法がまとめられていたりする非常に面倒くさくて由緒正しい食べ物なんだけど、麺としての蕎麦が誕生したのは400年以上前。蕎麦粉をお湯で練った「蕎麦がき」が生まれたのはさらに前で、蕎麦という穀物を食べだしたのは少なくとも1300年以上前だとの事。ヤバい。
だいたい江戸の食べ物ってのは面倒なんで、歴史を重ねるうちに色々な食べ方や作法が生まれたものだと考える。
全部をいきなり守っていくのも大変だとは思うけども、実際食べてみると理にかなっているものも多い。
蕎麦はうどんと違ってスルスルっと口に入ってくるわけでは無い。ちょっと強めに吸わないと入ってこない。よって、どうしても音が立ってしまう。音を立てずに食べるとなるとチビチビと食べなきゃいけなくなる。この辺の豪快さは江戸らしいな、という感じ。
蕎麦をつゆに必要以上に浸けてしまうきらいは、香りや個性の強い蕎麦を食べていないからかもしれない。香りが強い蕎麦を食べると、つゆがそこまで必要ない事が分かる。必然的に浸ける量も減ってくる。
…という感じで、自然とそうなっていく。必要以上に肩肘を張る必要も無いとは思う。
とはいえ、実際名古屋や関西で「蕎麦屋」と名の付く所へ行ったとて、香りの飛んでしまったような蕎麦が出てくることが多い。もろにザラザラ感等を味わいたいのならば蕎麦がきを戴けば良いので割愛するとして、せっかく蕎麦を戴く以上せめて蕎麦特有の香りや味わいは楽しみたいところ。
というわけで、蕎麦通の間でも話題の蕎麦屋「黒帯」へと行ってみた。
ここの大きな特徴としては「様々な産地の蕎麦を選ぶことが出来る」という点がある。
行ってみる
その蕎麦割烹は地下鉄原駅の丁度裏側にある。
蕎麦"割烹"なので、色々な一品料理も扱っている。接待や慶弔なんかにも使えそう。
店内は通路こそ狭めだが、そこまで席数が少ないわけではなく。座敷等も合わせて10卓ほど、かな。
蕎麦、いわゆる蕎麦切りの種類は5種類。
二八蕎麦(中打ち)
蕎麦粉と小麦粉を8:2で混ぜて打った蕎麦。蕎麦を打つとき、蕎麦粉のみだと麺として繋がりにくいし、かといって小麦粉を増やし過ぎると蕎麦の風味は損なわれる。
ちなみにこの8:2は黄金比とも言われている。
喉ごしも良く、かつ蕎麦の香りも楽しめる。
十割蕎麦(細打ち)
「じゅうわりそば」と読むところが多いけども、場所によっては「とわりそば」。ちなみに僕も「とわりそば」派なんだけど、こういう読み方が分かれるメニューを注文するときは「これください」と言うようにしてる。
先ほどの二八蕎麦と比べ、こちらは蕎麦粉100%。その分、ブツブツと切れやすく、麺として繋げて打つのが難しい。
蕎麦の香りや甘みが楽しめる。
田舎蕎麦(太打ち)
田舎蕎麦の定義は色々だけども、だいたいの共通項としては太麺・短め・黒いあたり。
先ほどの二八蕎麦や十割蕎麦のように配合比率が決められているものでは無いので、田舎蕎麦が蕎麦粉100%とは限らない。イメージとして都会の蕎麦が「細くてスラっと長い麺」みたいな印象があり、それに対しての田舎蕎麦というニュアンス。
この黒帯では蕎麦殻ごと製粉した黒っぽい麺を太打ちに。甘味や蕎麦のクセが強く出る。
秘境蕎麦(中打ち)
日本三大秘境と呼ばれる徳島県の粗谷で採れた蕎麦の実を使った蕎麦。収穫量が少なく、希少。
幻の蕎麦(中太打ち)
宮崎県の椎葉で採れた蕎麦の実を使った蕎麦。全国を探しても滅多に見かけられないらしく、日本一入手困難な品種だと言われている。
この5種類から選べるが、秘境蕎麦や幻の蕎麦は品切れの日もある。
秘境蕎麦と幻の蕎麦以外には北わせ蕎麦(北海道)、常陸秋蕎麦(茨城県)、霧下蕎麦(長野県)を使用している。どれにどの品種が使われているかは店内の掲示にて。
今回はスタンダードなところで十割蕎麦を戴く。
食べてみる
こちらが十割蕎麦。
そばつゆは器の1/3もないくらい。でも、実際そんなに使わなくても済むくらい蕎麦自体の香りや甘みが強い。
十割蕎麦なので、蕎麦粉100%だ。二八蕎麦では"つなぎ"となってくれていた小麦粉が全く含まれていないため、長く細い麺にするのは難しい。が、こちらはかなり長く安定した麺に見える。それに細麺である。
噛んでみると、しっかりとブチリと切れる。そしてその断面からは蕎麦の味わいが弾ける。これこそ十割蕎麦の醍醐味とも言える。
喉ごしやツルツルとテンポよく食べる事を重視するのならば、二八蕎麦に軍配が上がる。が、やはり蕎麦専門店では十割蕎麦を試したいところ。
そばつゆを少しずつ付けて戴く。途中から無心でいただいてしまった。
というのも蕎麦はどんどん風味が落ちていく。すぐに味わうのがベスト。
蕎麦が食べ終わった頃合いで蕎麦湯を持ってきてくれる。
蕎麦湯は蕎麦の茹で汁。蕎麦に本来含まれていたものの茹でた段階で溶けだしてしまった栄養成分が入っているので、苦手でなければ飲むと良い。
蕎麦湯にはややとろみがあり、もちろん蕎麦由来の香りもする。これをそのまま飲んでふむふむと通ぶるも良し。基本的にはそばつゆをこの蕎麦湯で割って飲む事が多い。つけ麺でいうスープ割りのようなもの、と考えてもらえれば。
割ったとしても全部飲み干すと塩分が心配なので、適度に。
十割蕎麦を安定したクオリティで出せるという事は他の麺も期待できるという事に他ならない。
他の麺も食べてみないとな。期待が高まる。
ショップデータ
蕎麦割烹 黒帯
営業時間
ランチ…11:30~14:30
ディナー…17:30~22:00
定休日
月曜日(祝日の場合は営業)
住所
愛知県名古屋市天白区原1丁目612 幸商事ビル1F
駐車場
専用駐車場:10台
メニュー(抜粋)
・二八そば…¥700-
・十割そば…¥900-
・田舎そば…¥900-
・秘境そば…¥1,000-
・幻のそば…¥1,200-
・天ぷらせいろ/鴨せいろ…¥1,500-
※税別
※本記事の内容は2019年12月現在のものです。