
一風堂といえば今では全国に名を馳せる有名豚骨ラーメンチェーン店。
博多ラーメンのチェーン店として有名である。
そんな一風堂では毎年冬の時期に味噌ラーメンを出す。
博多ラーメンのチェーン店なのに味噌…?という疑問が浮かぶ。「色々な味に手を出すラーメン屋さんはどの味も中途半端になりがち」という方程式が頭をよぎる。そんなジレンマを一風堂はどう超えているのか。どう超えてくるのか。
一風堂について
一風堂。かつての正式名称は「博多一風堂」という。
創業者は河原成美。最初は一軒のレストランバーから始まる。紆余曲折ありながらも経営は軌道に乗り、二店舗目進出の話も出た。
しかし同業種で二店舗目をやるのは格好良くないと考えた氏が出した結論はラーメン屋だった。これこそが博多一風堂である。
1985年、33歳の時だった。
今までのラーメン屋にありがちなイメージだった汚さや臭さといった要素を排除した綺麗なお店作りが特徴。これらの特徴は現在まで引き継がれている。
この後に居酒屋や他業態にも挑戦している。それらがうまく噛み合わず、やや資金繰りや経営が悪化しだす。
その後、転機となった博多一風堂の関東進出が1994年。東京に進出したのが1995年。ここで「白丸元味」「赤丸新味」が誕生した。
現在では全国に125店舗。海外進出にも積極的だ。
"革新派"である一風堂
そんな一風堂は「博多ラーメン」を軸としながらも常に革新的な挑戦を続けてきた。
それは赤丸新味にも現れている。香油や辛味噌を用いた博多豚骨ラーメンは現在でこそそんなに珍しくない味わいだけども、1995年当時では十分に革新的だったと言える。
揺らがない芯である「豚骨ラーメン」からは逸脱せずに、挑戦を続けていく――そんなスタイルが感じ取れる。
例えば、白丸元味は豚骨を用いた原点のラーメン。
巷では「豚骨×別素材」のラーメンがもてはやされたりする流れもある中、そこは変えない。魚介や鶏ガラは使用せず、豚骨×豚骨のスープで勝負する。
サイドメニューもシンプル。餃子や炒飯、そしていくつかの創作ごはん。
かと思いきや、期間限定・地域限定メニューも多く展開する。
店舗によっては担々麺、中華そば、尾道醤油、淡麗中華そば等のラーメンを展開する。しかしこれらは飽くまでも店舗限定。これらを全国展開してしまったらきっとブレてしまうだろう。挑戦とブレは紙一重だ。
さて、そんな期間限定メニューのうちのひとつとして、すっかり毎年恒例となっている味噌味のラーメン。
こちらは果たして"挑戦"なのだろうか。それとも"ブレ"なのだろうか。
行ってみる
一風堂へ行く。
愛知県には11店舗。うち名古屋市には6店舗が存在する。
色々な店舗へ行ったことがあるが、総じてラーメン屋としては綺麗で明るく清潔である。
今回登場した味噌ラーメンは「味噌白丸」。例年は「味噌赤丸」だったのだけど、今年は味噌白丸。
先述の通り、"赤丸"は革新派である。攻めた味付け、一見奇を衒っているようなトッピングをする。が、食べてみるとその絶妙なバランス感覚に驚かされる――そんなラーメンである。
例えば昨年の「味噌赤丸」は洋菓子専門店「チョコレートショップ」と共同開発したカカオ香油を仕上げに使っていた。
さて、今年の味噌味は"白丸"である。
ということはより博多ラーメンの土台に沿った味わいが予想されるけども、どうでしょう…。
価格は890円+税。
食べてみる
普段の白丸に比べて完成が遅い。麺も違うらしいしね。
硬めの茹で加減で注文した人のラーメンの方が先に供される。まぁそれは然して気にならない。
到着した味噌白丸はしっかりと綺麗に盛り付けられていて、宣材通り。

たまにこう…ドチャっとした盛り付けで出してくるお店ってあるじゃない?
やっぱり写真を見て食べようとしてるわけだし、そういう部分で食べる前から減点されちゃうのって勿体無いと思うんだよね。色々事情はあるかもしれないけどもね。
というわけで、期待感の高まる盛り付け。
外で何かを食べる時にはあんまりパシャパシャ写真を撮ったりしない。最初は撮るけど、後は基本的には食べるのみ。
料理は完成した瞬間が最もおいしく、徐々に味は落ちていってしまう。しかし伝えるための写真も撮りたい…ブロガーとしては板挟みである。
パシャパシャ写真を撮る人も否定はしないけども、僕としてはそれならば"取材"として来店したい。飽くまでもいち客として来店しているので、客としておいしく意図通りに食事をしたい、と考えている。
前置きが長くなってしまったけども、まずはスープを一口。
スープはもっと味噌感がガツンと来るかと思っていたけども、むしろ豚骨味。
豚骨味のスープに味噌がふんわりと香るようなイメージだ。
天下一品の味噌ラーメンはかなり味噌味に寄せてきていたが、一風堂の味噌白丸は"白丸"を保っている。オリジナルの味わいと味噌の比率は、天下一品は3:7くらいのイメージなのに対して、一風堂の味噌白丸は8:2くらい。
白丸の奥に味噌の味わい、コクを感じる。
麺は通常の白丸とは別注のものを使用。
通常と比べれば太めの麺。とはいえ味噌ラーメンとしては細めな麺を合わせる。
結構煮込まれた印象の柔らかい仕上げで、スープとの馴染みが良い。
トッピングで注目すべきは、まずはたくさんの野菜たち。
キャベツ、もやし、にんじん、きくらげ等を合わせたシャキシャキの野菜たちが柔らかい麺との良いコントラストを生んでいる。
チャーシューは良くも悪くも普通な味だが、無いと寂しい。
生姜は繊維を多く感じる荒削りのもので、混じり気の無いナチュラルな素材の味が楽しめる。ザクザク感もあり、良い。
ラーメンの中央には削った柚子の粉がかかる。柚子皮を使ったもので、結構しっかりとした苦みを感じる。
まとめ
総じてバランスの取れた一杯だった。
味噌味でありながらオリジナルの味わいをしっかり保持していて、ただの"味噌"ではなく"味噌白丸"として出しているプライドのようなものを感じた。