カステラといえば長崎名物。
長崎は日本の貿易窓口であった。安土・桃山時代にはポルトガルやオランダの文化がたくさん入った。今でも日常生活で使っている言葉のいくつかは異国の言葉だったりする。
パン、カルタ、シャボン玉、タバコなんかは実はポルトガル語。そしてカステラもポルトガル語である。
それらは南蛮文化と括られ、その新鮮さとともに日本に広まった。
その頃からカステラは長崎名物となった。
さて、しかし実はポルトガルにはカステラというお菓子は無い。
諸説あるが、カステラはカスティーリャ(Castilla)が語源とされる。しかしこれは食べ物の名前ではなく国の名前である。
この「カスティーリャ国のお菓子」のことをポルトガル語では「ボロ・デ・カステラ」と呼ぶ。ここからカステラの語だけが残ったと考えられる。
最近で言うならば、もし仮に「バスク風チーズケーキ」が「バスク」と呼ばれるようになったとしたら同様の事例と言える。
1600年になる頃にはカステラのレシピ等の文献もあり、江戸城でも接待でカステラが出たりしたとか。今でも長崎で有名なカステラの老舗「福砂屋」は1624年創業である。
鶏卵・小麦粉等を使用するため栄養価が高く、戦前までは衰弱者に対する栄養剤のような使われ方をしたこともあると言われる。
その後、焼く機械等の発達により、1950年頃からは一気に普及していった。
今回のお取り寄せ品
北海道牛乳カステラ
そんなカステラが北海道?――となるわけだが、確かに小麦粉は北海道の方が有利だ。新鮮な卵の供給もある。
そして牛乳。本来牛乳はカステラづくりには必要無い。しかし北海道らしさを冠するカステラならば欠かせない原料だろう。
さらに北海道では甜菜がよく採れる。こちらは砂糖の原料となる。
という面から、実は北海道は良質なカステラ製造に向いているとも言える。
このカステラは北海道のお土産として買う事が出来る。
新千歳空港内にショップを構え、作成もこちらで行われている。
北海道以外では、物産展やオンラインショップから購入可能。ただしこの空港以外では作っていないため、送料と時間を要する。
北海道牛乳カステラを手掛けるのは、あの世界的に有名なシェフである辻口博啓氏。
モンサンクレールを始めとした様々なパティスリー・ショコラトリーを運営している。そのうちのひとつがこの北海道牛乳カステラなのだ。
カステラを作るのは簡単だ。
しかし、そのクオリティを突き詰めていくと気の遠くなるような職人技が必要となる。カステラはちょっとした気候の変化で焼き上がりに差が出来てしまうため、未だに手作業で制作する所も少なくない。
そして、手作業で機械で作った様な綺麗な焼き上がりを毎回維持するのはとても難しい。
こだわりの原材料
牛乳
牛乳は釧路市のワンツー牧場の物を使用。この牧場、園長がスティーヴ・エトウだったからびっくり。彼は世界的に活躍するパーカッショニストである。
とはいえ、別でオーナーも居るし、彼も多忙だろうからそんなに携わってはいないだろうけども。どうやらオーナーとは友人らしい。
そんなワンツー牧場ではこだわり抜かれた牛乳が作られている。牛にとってストレスの無い状態での飼育・搾乳を行った新鮮な牛乳だ。
小麦粉
世界三大穀物のひとつ、小麦。古くから多くの国で栽培・消費される穀物である。
小麦の生産は中国、インド、アメリカの順で多い。日本の気候は気温の面では問題無いものの、ちょうど小麦の生育期に梅雨があり雨量過多となるので栽培には適さない。
しかし北海道には梅雨が無く、国内で唯一小麦の生育に適している地域となっている。
日本はアメリカ、オーストラリア、カナダから小麦を輸入している。
その輸入量は2017年で549万トン。逆に国内収穫量は91万トンとなっている*1。
つまり国内の小麦のうち、国産小麦は14%程度。後は輸入物ということになる。
その国産小麦のほとんどを北海道が担う。北海道の小麦は味や香りが良く、グルテン含有率も高いためモチモチ感がある。
上白糖
国内では北海道のみで生産される甜菜。別名サトウダイコンとも言い、そのダイコンに当たる部分――つまり甜菜の根から糖分を取り出す。なお、実際には大根とは遠い植物である。
温水に付けて糖分を溶け出させて、その糖液を煮詰めて濾過し、結晶化させることで砂糖となる。
甜菜から作られた砂糖はオリゴ糖を多く含み、穏やかな甘みの中にコクを感じる。
卵
カステラといえば卵。小麦粉と並んでカステラの重要な原料である。
卵ももちろん北海道産である。
お取り寄せしてみる
これだけのこだわりの詰まった北海道牛乳カステラ。
しかしお値段は他のカステラ相場に比較的近いという良心的な価格設定。
3切れで700円、6切れで1,400円である。
外装も立派。お土産にもぴったりである。
包装紙を開けば、重厚な箱が現れる。
この箱を開くと、ついに北海道牛乳カステラのお目見えとなる。
高級感のある包装である。
いやいや、さらにもう一重。袋に包まれているカステラは、簡単に姿を見せてくれない。
こちらは6切れのもの。
開けると既に食べやすいサイズにカットされたカステラが姿を現す。
美しい色をしている。卵黄のふくよかなイエローカラーだが、牛乳が入っているせいもあり、やや控えめな色合いではある。もっとプリンみたいな色のカステラもあるしね。
一切れあたり、約3cmの幅でカットされている。
横幅は約7.5cmと、やや小ぶり。
食べてみる
その神髄は味である。
フォークを入れてみると、カステラのふんわり感が分かる。
それはまるでスフレのよう。
ふかふかの生地は、いわゆる長崎のカステラとはちょっと異なる。
食べてみると、しっとりとしていて牛乳の香りと味わいを感じる。
卵黄のコクも感じ、小麦粉の強さのようなものも感じる。
牛乳が入っているせいか、コーヒーとの相性が良く感じた。
紅茶も合いそう。紅茶ならやはりニルギリが合うだろう。
北海道の様々な恵みが出会って織りなしたカステラ。
辻口博啓氏が手掛けているというブランドバリューは抜きにしても、充分なおいしさと魅力を感じる事が出来た。
ちょっとしたお土産や、母の日のプレゼントなんかにも最適だろう。
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*1:農林水産省の統計による