【琴羽商店】
【前】
ソース。やっぱり肉に一番合うのはソース、いわゆるタレだと思う。
特に今回用意する赤身の肉にはよく合うはず。脂やサシの多いサーロインなどはシンプルな味付けで脂の甘味を味わうのが良いと思うけど、赤身のお肉には大胆な味付けでもマッチすることが多い。
特製ソースは現在試作を重ねているところ。
小さめのサイズのタマネギをふんだんに煮ながら、醤油をベースとして甘辛い風味に調整。他にも様々な野菜のエキスを溶け込ませている。
タマネギは素材感を残そうか漉そうかは今も悩んでる。現在試作ver.3だけど味としてはかなりおいしい。まだ調整は必要そうだけど、充分評価してもらえそうな仕上がりにはなっている。
タレは厳密には全く同じ味になる事は無い。
全く同じ材料を完璧な精度で調合したとしても同じ味にはならない。ほぼ一致はするだろうけども、例えば気温によって差が出てくる。作ったときの気温や、保存しているときの気温。あと湿度も。混ぜ方や入れる順番でも差が出るかもしれない。
そう考えていくと、寸分の狂いもなく100%同じものを作るという命題は空論となり、実際に再現するのは不可能ということになる。新しいタレになったり継ぎ足されたりするたびに、味は刻一刻と移り変わってゆくのである。
タレにはたっぷりと時間をかける必要がある。
野菜を煮詰めたり、丁寧に漉したり…そもそも調合の比率を変えてみたりする研究の時間も必要になる。
「どんな料理でもおいしくなるタレ」というものは無く、なおかつ「誰もがおいしいと思えるタレ」は存在しない。だからこそ、数えきれないほどの種類のタレがあり、そして僕もまた正解のないタレづくりをするのである。
その"一瞬一瞬"を表す意味での「時間」と、"手間暇"という意味合いの「時間」。
両方の意味合いの時間が溶け込んで、それもまたスパイスとなる。
そんな最強のソースは時の味がする。ぜひ味わっていただきたい。
【次】