酒というものは奥が深いが、果実酒もまた奥の深い酒である。
リキュールと違い、果実が直接醸されているため、その味わいは複雑。
果実を100%使っていても、ジュースと違って果実を丸かじりしているような味にはならない。それこそワインが良い例だ。
果実酒は海外ではフルーツワインと呼ばれる。
「ワイン=ぶどう」として、ぶどう以外の果実を使うと「フルーツのワイン=フルーツワイン」となるわけだ。味のイメージも掴みやすい。
「TAWAWA Sparkling ラフランス&山ぶどう」について
TAWAWAの名からして、ふくよかな果実が想像できる。
なお、「たわわ」というのは「果実の重みで枝がしなる様子」を指す。枝が「たわむ」様子を指しているのだ。
そこから転じて、果実自体が大きく実っている、もしくはたくさん実っている様子そのものを指すようになった。ぶどうやリンゴもたわわに実るし、米もたわわに実るのだ。
ただし、じゃがいもやサツマイモ等の地中の作物はたわわと言わない。枝がたわまないからね。
東根フルーツワイン
この「TAWAWA」を手掛けるのは東根フルーツワイン。
その名の通り、フルーツワイン造りを得意とする。
山形県中央に位置するワイナリーである東根フルーツワインでは、年間の寒暖差が大きく、かつ台風等の被害も少ないのが特徴。
様々なフルーツを使っているが、特にさくらんぼを用いたフルーツワインが売りだ。山形だしね。
果実は全て収穫から2日以内の果実を醸造した本格果実酒。
成分分析にも力を入れており、「科学的にもおいしい」果実酒を造っている。
なお、「TAWAWA Sparkling」で使われるラフランスと山ぶどうはどちらも山形県産のものを使用している。
ラフランス
ラフランスは西洋梨(洋梨)の品種のひとつ。
日本の洋梨の60%以上がラフランス。ゆえに日本では洋梨=ラフランスとなっている。
ちなみにラフランスは日本での呼称であり、フランスではクロード・ブランシェ(Claude Blanchet)と呼ばれる。
ラフランスはまだ実が固いうちに収穫する。しかし、この状態ではとても食べれたものじゃない。
この後、追熟――収穫後に一定期間置いておくことで果実は柔らかくなり甘さも増す、という性質がある。
山ぶどう
ぶどうと同じくブドウ科の植物である。
ぶどうの多くはヨーロッパの種だが、山ぶどうは実は日本古来の品種であり、近年はその価値が見直されている。
通常のぶどうと比較すると甘酸っぱく、あまり生食向きではない。専らジャムやジュース等に加工される。濃厚な味わいと豊富な栄養が特徴。
山ぶどうは収穫が難しい。まず、結実までには6年の歳月を要する。これは通常のぶどうの約3倍である。
また、山奥にしか自生しない上、高所に実を付けるため、収穫そのものも困難を窮める。
最近では山ぶどうとぶどうを交配した扱いやすい種類も増えてきている。
スペック
「TAWAWA Sparkling ラフランス&山ぶどう」は果実酒。
アルコール度数は9%。
使用されるラフランスと山ぶどうはどちらも山形県産。
炭酸ガスを充填しており、まるで発酵のガスによる自然な微発泡を思わせるようなお酒である。
飲んでみる
グラスに注ぐと、ジュースのようでもありながらワインの様相も感じる。
微発泡なので、耳を澄ませばわずかにパチパチと音がする。
飲んでみると、ぶどうジュースのようなフワッとした甘口の味わい。
その中からラフランスが現れる。ほのかな酸味、まろやかな甘みを併せ持つラフランスが過ぎ去ったあと、山ぶどうの余韻が顔を覗かせる。ジューシーで濃厚な山ぶどうの余韻は長く、充足感がある。
渋味、雑味の類いは無く、本当にジュースのように飲めてしまう。しかし度数は9%なので、アルコールに弱い人は注意。
ちなみに、このTAWAWA Sparklingは"ラフランスのフルーツワイン"と"山ぶどうのフルーツワイン"をアッサンブラージュ(Assemblage=混ぜ合わせる)して出来たもの。
ラフランスと山ぶどう――一見意外性のあるコンビネーションだが、まとまりはとても良い。
料理とのペアリングは…飲んだ時から鶏肉に合いそうだな、と思っていた。
塩麹焼きあたりが一番マッチしそうだけど、焼き鳥や照り焼きも良いだろう。
唐揚げなんかの揚げ物も良いけど、それだともっと炭酸がシュワシュワしていた方がピタっと来そう。鳥の焼き料理系で合わせるのが吉か。
ナッツやジャーキーなんかの乾きものも合いそう。