今年のボジョレーの話題はほとんど耳にしないまま解禁日を迎えてしまった。
まぁ僕の狭い界隈だけの話なので、もしかしたら世間ではいつも通りなのかも。
ただの個人の一意見だと思ってご覧いただければと思う。
ボジョレーとは何なのか
名称
便宜上ボジョレーと呼んでいるが、その実はボジョレー・ヌーボー(Beaujolais Nouveau)。
正直ボジョレーだけでは意味合いが変わってきてしまうが、そんな重箱の隅を楊枝でつつくような事をしても何一つとして得は無いので勘弁してほしい。このブログでは引き続きボジョレーと呼ぶ。
カタカナ語はたまに本場の発音に合わせようという動きがモソモソと生ずる。
古くはカロチンがカロテンに正式に移行したり。最近だとウクライナの首都キエフがキーウと呼ばれるようになったり。意外と流動性がある。
ボジョレーもボージョレと呼ばれる事も増えてきたような気がする。フランス語発音なら「ボ・ジョ・レ[boʒɔlɛ]」が近いし、英語として発音するなら「ボゥ・ジョレイ[bòʊʒoʊléɪ]」が近い。
そんなボジョレーは場所の名前だ。そしてヌーボーとは「新しい」という意味があり、即ち「新モノ」を指す。
つまりボジョレー・ヌーボーとは、フランスの南東部に位置するボジョレー地方で生産される新モノのワインのこと。
なおかつブドウの種類はガメイ種に限る。カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネじゃダメ。
まぁ日本で例えるなら「新潟の新米コシヒカリ、解禁!」みたいなイベントになるのかな。収穫のお祝いだったり今年の味を見る指標になったりする。
解禁日
解禁日は毎年11月の第3木曜日。日付が変わった瞬間に解禁だ。
これは世界共通のため、日本はかなり最速でボジョレーが解禁される国となる。フランスよりも8時間ほど早くボジョレーを愉しむ事が出来る。
飲食店・小売店などでは0時ちょうどに封を開けるため、日付が変わると同時に楽しむマニアの方もいらっしゃるとか。
ガメイ種
ガメイ種というブドウ。ワインに全く触れない人はもちろんのこと、普段ワインを飲まれる方でもあんまり聴き馴染みがない品種かもしれない。
逆にガメイ種=ボジョレーのイメージが強すぎて、他のワインでガメイ種を見掛けたことが無い人も多いのかも。
ガメイ種は黒ブドウ*1に分類される。
ガメイ種の中にも種類があるが、そちらは割愛。
ボジョレー地区で栽培されるブドウのほとんどはガメイ種。まぁだからこそボジョレーヌーボー=ガメイ種となったわけで。
成熟も早く比較的育成が容易なため、11月の解禁までに急いでワインにするのに向いている品種と言える。
ガメイ種はボジョレーとして飲まれることが多いので、割とライトなフルーティー系とベリー系の酸味を合わせたフレッシュな品種として認識されている。
熟成させることで力強い味わいに深まると言うが、果たして…。
なお、ボジョレー・ヌーボーとして作られたワインは基本的に熟成には不向きなので、開けたてが一番おいしい。
ボジョレーが広まる
ボジョレー・ヌーボー解禁というフランス国内でのイベントは、ワインの流通とともに世界へと広まった。
ボジョレーが日本にやってきた
日本にボジョレーが来たのは1976年のこと。バブルとともに大ブームとなったが、バブル崩壊で一旦下火に。なお、当時は解禁日まで税関を通過できなかったため、空港にわざわざ行って最速で入手する人まで現れる始末だったようで。
なお、現在は事前に各小売店や飲食店に配送され、解禁日まで箱を開封せずに保管するということになっている。
1997年頃には赤ワインがブームになる。ここでボジョレーが再び脚光を浴びることになった。
キャッチコピーの注目度も高まり、飲食店ではイベントも大々的に行われるようになった。
2000年に入ってからは多様化を見せ、ペットボトル入りのボジョレーやサイズ違いの物も販売を開始した。
また、産地をさらに限定したプレミア版などのバリエーションも生まれ出している。
ボジョレーと日本の親和性
ボジョレー・ヌーボーは非常に飲みやすい。
発酵期間も短く、ワインとしては非常に"若い"。
だからこそ、普段からワインを飲んでいない人でも飲みやすい。
元々ワインは日本には無かったお酒であり、導入としてはこの上なく適している。
ここからどれだけの人がワイン沼へと落ちていったのだろうか。罪深い存在である。
あとはシンプルにこういうイベントが好きという国民性もあると思われる。
バレンタイン商戦然り、クリスマス商戦然り。
そしてボジョレーから離れる
昨今は「ボジョレー離れ」が進んでいると勝手に思っている。
大きな理由は以下の通り。
ボジョレーを飲む必要が無くなった
先ほど「ボジョレーは導入にぴったり」という言葉を出したが、まさにその通りで。
導入して他のワインを色々と嗜むようになると、ボジョレーはどこか物足りない味に感じてしまう。
あのライトで飲みやすい"若い"感じが良いのだが、まぁでもわざわざ選ぶことは無いかなって感じになってしまう。
この世界には一生で飲み切れないほどの種類のワインがあるわけだし、確かにボジョレーに拘る必要は無いように思える。
選択肢が広くなった
こちらは1つめの理由に似ているけど、今ってネットで検索すればすごい数のワインと出会う事が出来るじゃない?それに味の評価もまとめられているし、専門的なサイトもいくつもあるし、新たなワインと出会う機会なんてバンバンあるわけで。
昔は中身の味はガチャみたいなもんで、それこそ開けてみないと判らなかったり。飲んでみて微妙でもちょっと寝かせたり空気に馴染ませたりすると印象が変わるから、ワインって本当に不思議。
ボジョレーって色んなメディアとかから情報が受動的に入って来るもの。だから、「ああ、これが話題なんだ、じゃあ飲んでみようかな」という誘因が出来た。
でも今は自分から情報を探しに行けちゃう。その上、とても手軽で気楽に。これもまた、敢えてボジョレーを選ばなくても良いという理由になり得る。
なんか種類が増えすぎてよく分かんなくなった
最近、色々なバリエーションを出してきているボジョレー。前述の通り、サイズ違いやプレミア感を付けたり。昔ながらの製造方法を謳っていたり、選りすぐり感を出したり。
しかし、そのせいでブレているのもまた事実。「で、結局、普通のボジョレーってどれ?」ってなってしまう。
昨今のあのせい
昨今のアレコレのせいで、例えば去年は0時ちょうどに居酒屋で解禁を迎える事が出来なかったと思う。時短営業とかもあったしね。
こういうことが2年も続けば、風習は廃れだしてしまう。そこに必要性を見出せなければわざわざ再び重い腰を上げることも無くなってしまう。
また、今年に関して言えば世界的な情勢も相まって、ボジョレーの価格が上がっているそう。空輸の価格が上がっていて、その分が上乗せされているというわけだ。
これは今まで使っていた最短ルートがちょっと好ましくないということで、逆回りでアメリカを経由したり中央アジアを通過して輸送している。これらにより追加で燃料が必要になるし、積載量も変化する。
また、便数も絞られているため、これも価格高の要因となっている。
そうなってくると、わざわざ高い額を払ってボジョレーを飲むなら、もう普通のワインで良くない?となってしまうのも頷ける。
そもそも話題に上がっていない…?
これは僕の意見ではあるが、割とワインに注目している僕ですら、今年のボジョレーは話題に上がっていないと感じる。もしかするとテレビでは取り上げていたのかもしれないが。
成城石井やカルディなどの輸入食品に強いストアでの取り扱いはもちろんチェックしていたが、なんだかボジョレー界隈が静かだと感じる。ボジョレー界隈ってどこだよ。
「ちょっとコンビニで買ってみるか」と思い、立ち寄ってみたが一本も置いていなかった。例年はボジョレーを置いているコンビニだったが、今年は全く見掛けず。
あのジョルジュ・デュブッフ氏が亡くなったから?と思ったけど、氏が亡くなったのはもう2年半以上前のことだ。
調べてみるとちゃんと今年もジョルジュ・デュブッフからもボジョレーは出ていてサントリーが取り扱っているし、アサヒもボジョレーを取り扱っている。
今年もちょっと触れておきたいなとは思うので、どこかのネットショップで買ってみようと思う。
今年のボジョレーの出来栄えは?
ボジョレーヌーボーには毎年誇張されたキャッチコピーが付けられる。
でもよく考えたら「うぇぇ!今年のボジョレーはやめとけ!不作だ不作!くそまずい!」って言われたらさすがに買わないもんね。興味は湧くけど。
今年のボジョレーは中々良い出来栄えらしい。
「しっかりとした色、香りを持つヴィンテージ」とのことで、これは将来2022年物のワインを飲むのが楽しみになりそう。ここ最近はそこまで大外れな年が無いような気がする。
酸味は穏やかなようで、どっしりとしつつも円みのあるふくよかなヴィンテージとなりそう。
ボジョレー、興味がありましたら是非どっか近くのお店で探してみては。
それこそカルディや成城石井、もしくは酒屋が近くにあれば簡単に見つかるはず。
コンビニはもしかしたら取り扱うか取り扱わないかはオーナー裁量なのかも。
僕のようにものぐさな人はネットからどうぞ。
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やはり王道のジョルジュ・デュブッフを頂くか、それとも他のメーカーに手を出してみるか…悩ましい。
*1:ブドウは白ブドウ、赤ブドウ、黒ブドウの3つに分けられる